086 民話 メネフネ・ケクプアのカヌー(7.道なかばで夜が明ける)

(前回からの続き)

こうしてカヌーは、ケプクアが指示した流れに沿って、引き出されました。
すなわち、プウヌイの東側を流れるヌウアヌ川に沿うコースです。


道なかばで夜が明ける

カヌーはこのコースを通って、海をめざして下って行きました(*1)。

ところが、ちょうどワイカハルル近くの、カアラアまで来た時のことです【解説】。
東の空が明るくなり、夜が明けたのです。

するとメネフネたちは、これまで大切に運んできたカヌーを放り出しました。
そして、彼らの住むワオラニに向けて、帰ってしまったのです。

ケクプアを讃える

カヌーは? と言うと、海までもう少しの所で、溝の中にとり残されました。
それから何世代もの間、カヌーはそのまま放置されていました。

そして、人々はそのカヌー見て、カワワ・ア・ケクプアと呼ぶようになりました。
これは 「ケクプアのカヌー」と言う意味で、ケクプアを讃えたものです。

妻の望みは叶わなかった

一方、メネフネの助けを借りたにも拘(かかわ)らず、カヌーは海まで引き出せませんでした。
タヒチに行きたいと言う、首長カカエの妻の望みは、叶(かな)わなかったのです。

(終わり)
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【解説】ワイカハルルの滝
ワイカハルル(Waikahalulu)と言う地名は、今では「ワイカハルルの滝」で有名です。
この滝はヌウアヌ川の河口から約1kmほど上流にあり、その周囲はリリウオカラニ植物園として整備されています。


ケクプアのカヌーは、この辺りまで引き出されたのですから、海辺までも本当にあと一歩という所でした。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.