118 民話 ヒクとカウェル(14.カウェルの目覚め) 

(前回からの続き)

カウェルの目覚め

遂(つい)にカウェルは意識を回復しました。

見れば、目の前に愛するヒクがいるではありませんか。
彼はそっと、彼女の方に身をかがめていました。

彼女は唇を開くと、何事も無かったように言いました。
「私を置き去りにするなんて! なぜ、そんなに冷たくなれるの?」

「死者の世界」の記憶が消えた

彼女の記憶からは、「死者の世界」で起きた出来事の全てが、消え失せていました。
-- 群がる霊たちやミル王のこと、そこでヒクに会ったこと、 などの全てが。

彼女は、自分が死んだ数日前に逆のぼって、記憶の糸を断ち切ったのでした。
そして今、この瞬間から再びその糸を伸ばして、記憶を再開したのです。

ホルアロアの人々は大喜び


ホルアロアの人々は、大変な喜びに満ち溢(あふ)れていました。
カウェルとヒクの2人が帰って来たからです。

人々は、美しいカウェルと、今や英雄となったヒクを取り囲んで、2人を大歓迎しました。

それ以来、彼女は2度と彼から離れることが、ありませんでした。

(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.