148 民話 カハラオプナ(30.両親らが自然に還る)

(前回からの続き)

両親はマノアの風と雨になる

カハラオプナの最後を聞いた両親は、マノアの渓谷に身を引きました(*1)。

彼らは余りにも過酷な現実を目の当りにして、人間として生き続けることを断念したのです。
そして、人間から超自然的存在へと、彼らの姿を大きく変えたのでした。

今では、彼女の父のカハウカニは、「マノアの風」として知られています。

しかし、通常の目に見える姿は別にあります。
彼は、カハイアマノの下にある、ハウ(ハイビスカス)の林になったのです(*2)(*3)。


一方、母のカウアクアヒネは、その姿を「雨(マノアの雨)」に変えました。
ですから、彼女が愛する娘の家の近くでは、しばしば雨に遭うのです。

祖父母は山とレフアの姿に還る

さらに彼女の祖父と祖母もまた、人間の姿をとり続けることを断念しました。

そして祖父は、人間の姿からもとの山の姿に還ったのでした。
さらに祖母はと言えば、オヒア・レフアの低木の姿に還りました。

今でも、その山の頂上に行けば、レフアの低木に出会うことが出来ます。

彼らはそこから、あの古い家を見守り続けているのです。
---大好きで、この上なくかわいがっていた、カハラオプナが住む家を。


(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales,Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.
(*2) カハイアマノ(Kahaiamano)は、 カハラオプナが幼い頃に住んだ家がある場所です。
詳しくは、本ブログ「122 神話 カハラオプナ(T.カハラオプナの光明)」を参照下さい。
(*3) 「ハウ(hau)」とは、数多くあるハイビスカスの中で、学名が"Hibiscus tiliaceus"の種です。日本では沖縄などで見ることが出来、オオハマボウと呼びます。