188 民話 カアラとカアイアリイ(40.愛する2人の死を嘆く)

(前回からの続き)

カアイアリイが大王に答える

「どうかお聞き下さい。おお、王様。」
と、カアイアリイが言いました。

「私は、命を賭けてカアラを愛してきました。
そして力を振り絞って彼女を捜してきました。

それらに注いだ私の情熱は、これまで王様のために戦ってきた以上のものでした。

私はこれまで我が母を愛した以上に、彼女を愛しました。
そしてこれまで自分の人生を考えた以上に、彼女のことを考えました。

彼女は、初めて会ったその時から今まで、ずーっと私の前にいます。
そして彼女の温かい乳房は、私の喜びでありまた安らぎでした。

その彼女が今は冷たくなっているのです。

カアラの所に行かせて下さい

ですから、私は行かねばなりません。
-- 彼女の声と愛が行ってしまったその場所へ。

私が両目を閉じたその時に、一番良く彼女が見えるのです。
ですからどうか私が、永遠に両眼を閉じるのをお許し下さい。」

こう話しながら、彼は身をかがめて、愛する人を抱きしめました。
それからウアに、優しく「さようなら」 を言いました。

そして次の瞬間、彼は自らの眉間(みけん)と脳を、素早く強力な石の一撃で打ち砕いたのでした。

愛する2人を洞窟内に葬る

こうして首長は自ら命を絶ち、愛する人の脇に倒れ込みました。
一方、一度に2人の死に直面したウアは、その場に泣きつぶれてしまいました。

王は愛する2人を、洞窟の岩棚上に並んで横たわらせるよう命じました。

さらに、彼らをタパ布で包むよう命じると共に、
そのタパ布は竹でしっかり包んで、海の中を運び下すよう指示しました。

そして洞窟内は、首長カアイアリイと少女カアラの死を悼む、深い悲しみに包まれました。
それから、ウアが哀悼のチャントで、彼らの死を嘆きました。

-- 以下(首長と少女の死を嘆く歌) 略 --

カウノルに2人の悲哀を嘆く声があふれる

チャントが終わるとウアは兄弟の手で、悲しみに包まれたカウノルの海辺に、連れ戻されました。

そこには、あの首長と少女の悲哀を嘆く、泣き声があふれていました。
その嘆き声の多くが、愛し合う2人に向けた哀悼の歌チャントでした。

-- あのカアラの潮吹き穴の洞窟で、仲良く並んで眠る2人の。


(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.