216 カネアウカイ(7.神の恵みとたたり)

(前回からの続き)

魚の群れが毎年やって来る

そして、あたかもこのことを裏付けるかのように、この地は魚が豊かなことで有名になりました。
アナエ・ホロとカラの群れが毎年、回遊して来るからです(N.1)(N.2)。



4月から7月の間は、この地域の至る所でこれらの魚を見ることが出来ます。

彼らは、オヘア、ホヌアウラ、マウイから、カフクを通ってこの地にやって来ます。
そしてまた、来た時と同じ経路をたどって帰って行く、と言われています。


ある男が神の石を傷つけた

人々はこの石を神と崇(あが)め、崇拝(すうはい)していました。
その中で20年ほど前、ひとつの事件が起きました。

この地区(ワイアルア)の道路監督者が、何とあの神の石を投げ飛ばし、その一部を割ってしまったのです(N.3)。


これを知った信心深い人々は、こう預言したのでした。
「きっとカネアウカイ神の祟(たた)りがあるに違いない。」

神を冒とくした報い

そしてしばらく後、その監督者は職を失った上に、ワイアルアから追い出されてしまったのです。

それ以後、彼は死ぬまで、二度とこの地に戻ることはありませんでした。
さらに、彼の親戚の数人が、不慮の死に見舞われました。

そのため多くの人々は、こう信じたのでした。
「これは皆、神を冒とくした彼のおこないに対する報いだ。」

(終わり)
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(ノート)
(N.1) アナエ・ホロ(anae-holo):
アナエ・ホロは、出世魚であるアマアマ('ama'ama)が、成長して回遊する時期の呼称です。アマアマの学名はMugil cephalus、和名はボラです。
アマアマは、かつてハワイで最も重要な食用魚の一つでした。
(N.2) カラ(kala):
カラは、その前頭部に角のような突起があるので、日本ではテングハギと呼ばれます。学名はNaso unicornis、ここで種名unicornisは「1本の角を持つ」ことを示しています。
(N.3) ワイアルア(Waialua):
ワイアルアとは、オアフ島の北西部を占める地区の呼称です。なおかつては、「地区」のことを「モク(moku)」と呼んでいました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 23. Kaneaukai: A Legend of Waialua. Thos. G. Thrum.