241 プウペヘの墓(4.恐ろしい嵐がやって来る)

(前回からの続き)

マカケハウは山へ水汲(くみ)に行った

ある日のことです。
マカケハウは、愛するプウペへをマラウエアの洞窟に置いたまま、山の泉に出かけました(*1)。
おいしい水をヒョウタン容器に満たし、洞窟に持ち帰ろうと思ったからです。


洞窟は断崖絶壁の一番下で、外に向けて大きな口を開けています。
そして断崖は前方に張り出しながら、プウペヘの岩よりもさらに高く聳(そび)えています。

プウペへは洞窟でウミガメを焼いた

海水は洞窟のずーっと奥まで押し寄せて来ます。

しかし、まだまだ洞窟の中には空間があります。
ですから泳ぎの上手な人ならば、中まで入れるのです。

プウペへはしばしば、そこで一休みしました。
そして、「ホヌ」 すなわちウミガメを焼きながら、愛する彼の帰りを待ったのでした。


恐ろしい嵐の季節

島のコナ(風下側)では、この時期は恐ろしい嵐の季節でした(N.1)。

嵐は赤道のあたりで生まれて、はるばるハワイにやって来ます。
そして大洋を大きな塊にして、島々の南岸に向けて、激しく投げつけるのです。

彼女の命が危ない

その時マカケハウは、プロウ渓谷の岩から湧き出す泉に居ました。
彼は果てしなく広いコナの、一番先の方に注目しました。

そこに見えたのは、強風に飛ばされる雨と濃い霧でした。
それらが、唸(うな)り声を上げる暴風と一緒になって、パラワイの谷を突進して来るではありませんか。

これを目の当たりにした彼は、こう確信しました。
「この嵐で彼女のいる洞窟は、きっと海水で溢(あふ)れてしまう。
そして、愛する彼女が死んでしまうに違いない。」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) コナ(kona):
コナとは、ハワイの島々における風下側の地域を指します。そして、マラウエアの洞窟やプウペヘの岩は、ラナイ島の風下側、すなわちコナにあります。
なお、コナの反対側である風上側の地域は、コオラウ(koʻo.lau)と呼ばれます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16.The Tomb of Puupehe, A Legend of Lanai, From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.