243 プウペヘの墓(6.プウペヘの死)

(前回からの続き)

この中に愛する人がいる

しかし、マカケハウの場合は全然違います(*1)!

愛する人が、今、この泡立ち、沸き返り、そして渦巻いている、湾の中にいるのです。
その彼にとって、この荒れ狂う海の奔流は、一体何なのでしょう?

この沸き立つ泡の真っただ中で、一体何を見ようと言うのだ 。

彼を見上げる彼女の顔?
愛(いと)おしく若々しいその体?

それとも、息絶えた愛する人だけで、
何もかもが、ぶちこわされてしまったのか?

荒れ狂う海に飛び込む

あなたならば、この瀬戸際で思い悩むかも知れません。

しかしマカケハウは、目の前の荒れ狂う海に飛び込みました。
そして荒海に口を開けた洞窟から、嵐の犠牲となった彼の花嫁を、奪い取ったのでした。

人々がプウペヘの死を知る

その翌日、漁師たちはマカケハウの哀歌を聞きました。
そしてその谷に住む女たちが、プウペヘの所に下りて来て、彼女の死を嘆き悲しみました。

彼らは華やかで新しいカパ布で、プウペへを包みました。
そして彼女の上には、香り高いナーウーの花輪を置きました(N.1)。



(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ナーウー(na-u):
ナーウーはクチナシ属(Gardenia)の植物で、ハワイには3つの固有種(G.brighamii, G.mannii, G.remyi)があります。日本のクチナシ(G.jasminoides)も同じクチナシ属で、強い芳香があります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16.The Tomb of Puupehe, A Legend of Lanai, From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.