247 アイ カナカ(2.王を罵(ののし)るドラム)

(前回からの続き)

王を罵(ののし)るドラム

王の家に忍び込んだ男の子たちは、神殿に備え付けられたパフ カエケ(ドラム)を見つけました(*1)(Fn.(1))。
そして、それをトントンと叩(たた)き始めたのでした。


ところが、カマロの息子たちが、そのカエケ(ドラム)を叩くのを、ある意地悪い者たちが聞いたのでした。

彼らはすぐさま王クパのところに行き、こう伝えました。
「神官の息子さんたちが、王様のドラムを使って、ゾットするほどひどく、王様を罵っています。」

(原文の脚注)
Fn.(1) パフ カエケ(pahu kaeke):
ドラムの1種
ドラムの1種で、ココヤシの幹(みき)をくり抜いて、中空にして作られます(N.1)。
その片端面には、鮫(サメ)の革が張られています。


2つ1組で使われるのが普通で、そのうちの1つは他よりも大きなものでした。
どこかしら、文明国のドラムに低音用と高音用があるのに、倣っているようです。

ドラムのうちの1つは演奏者の側面、左右どちらかに置かれました。
そして演奏する時は、両手を使って指で叩きました。

秘伝のドラムによる追放術
ドラム演奏法の中には、秘伝を授かった人だけが知る、特殊な奏法があります。
この奏法を使えば、ドラムの奏者は何でも追放出来るのです。

噂によるとその場合、奏者は自分の考えや気持ちを、一言も声に出す必要がありません。
その代わりに、秘伝を授かった人に理解できる方法で、ドラムを演奏すれば良いのです。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ココヤシ(cocoanut tree):
ココヤシ(coconut tree)の綴(つづ)りに "a" が付いているのは、古語だからです。
「ココヤシ」はこの植物の和名であり、学名はCocos nucifera、英語名はcoconut palm、そしてハワイ語名はニウ(niu)です。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev.A.O.Forbes, p.186-192.