254 アイ カナカ(9.サメの神の指示)

(前回からの続き)

しかしながら、わしがこれからお前に伝えることを、すべて実行するんだ!(*1)

神官をお前の家まで運べ

断崖絶壁の下にある、プウカヒ・ヘイアウに戻りなさい。
そして、神官のカヒワカアプウを背負うのだ。

それから断崖絶壁を登って、島の向こう側へ運びなさい。
--- はるばる、カルアアハにあるお前の家までだ。

白いカパと聖なる動物たちを集めよ

お前の住居の周囲全てに、聖なる柵(さく)を作りなさい。
そしてその周りは、白いカパ布で作った、聖なる旗で取り囲むのだ。


黒い大きな豚をラウ(400頭)、赤い魚をラウ、白い鶏をラウ、集めなさい(N.1)(N.2)。
そして、わしがやって来るのを、じっと待つんだ。

合図は渓谷を渡る虹だ

そう、ラナイ島の上空を見つめながら、ひたすら待つんだ。

すると、やがて小さな雲が一つ現れる。
大きさは人の掌(てのひら)ほどで、雪のように白い雲だ。

その雲は大きくなりながら、東風に逆らって海峡を横切るように、進んで来るだろう。

そして、マプレフ渓谷の背後にある、モロカイ島の上空で止まるだろう。
島の山々の頂(いただき)を結ぶ、尾根筋の上で(N.3)。


すると、一つの虹が渓谷を渡って、両岸をつなぐだろう。

これによってお前は、わしがそこにいること、そして、
お前の復讐の時が来たこと、を知るだろう。

生きて還るのはお前だけだ

さあ、行きなさい。
そして、よーく覚えておくんだ。

偉大なるカウフフのこの神聖な境内に、大胆にも足を踏み入れて、
これまでに生きて還った人間は、唯一お前だけだと言うことを。」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 黒い大きな豚, 赤い魚, 白い鶏 (black hogs, red fish, white fowls):
「黒い豚,赤い魚,白い鶏」 の組合わせは、神に捧げるお供物では珍しく無く、他のハワイの昔話の中にも見られます (例:ライエイカワイ(*2))。
なお、英語の”fog" は 「成長した大きな豚」、これに対して"pig" は 「子豚」です。
このお話しでは、カマロ(kamaro)が復讐の旅に連れ歩いたのは"pig"ですが、今回、サメの神に指示されたのは"hog"です。
(N.2) ラウ(400頭) (lau(four hundred)):
ラウ(lau)はハワイ語で、一般的には「多数の, たくさんの, 数字の400」を意味しますが、ここでは、カッコ内に付記された英語訳(four hundred)から、ラウ=400頭(,匹,羽) と考えます。
(N.3) 尾根筋(mountain peaks):
モロカイ島の尾根筋とは、島の東部(East Molokai)に連なる山の頂を結ぶ稜線です。そこでの最高峰カマコウ(標高1,512m)は、島全体の最高峰でもあります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev.A.O.Forbes, p.186-192.
(*2) D. Kalakaua and R.M.Daggett(1888): The Legends and Myths of Hawaii, The Story of Laieikawai, p.457.