255 アイ カナカ(10.虹が渓谷を渡る)

(前回からの続き)

神の命令を実行する

カマロは喜びに満ち溢(あふ)れて、家に戻って来ました(*1)。
そして、サメの神に命令された全ての事を、忠実に実行しました。

彼は自分の住居の周囲に、聖なる柵(さく)を作りました。
そしてその柵を、白いカパ布で作った、聖なる旗で囲いました。

それから指示された通りに、黒い大きな豚、赤い魚、そして白い鶏を、各々ラウ(400)ずつ集めました(N.1)。


これ以外にも、神々に奉納する供物として、ココナツや白いカパ布なども集めました。

時が流れる

それから彼は腰を下ろすと、注意深く大空を見つめました。
--- 復讐の時を知らせる、約束の合図を探して。

一日一日が過ぎて行き、それが積み重なって何週にもなりました。
さらにその何週もが積み重なり、何ヶ月もが過ぎようとしていました。

壮麗な虹が渓谷を渡る

そしてある日、遂(つい)にあの約束の合図が現れたのでした。

雪のように白い小さな雲、人の掌(てのひら)ほどの雲が、
ラナイ(島)の山々の上に現れました。

そして、強い向かい風の中を、嵐の海峡を横切って進んでいます。

その雲はこちらに向かいながら大きくなり、雄大で厳(おごそ)かな姿に変わりました。
そして、マプレフ渓谷最上流部に連なる、山々の上に落ち着いたのでした。

すると荘麗な虹が現れて、誇らしげに渓谷を渡りました。
その両端は谷の両岸の高地に伸びていました。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(ノート)
(N.1) 赤い魚(red fish):
神々に捧げる魚の色は、赤と白が最も多かったと言われています。
そのうちの赤い魚では、ウェケ・ウラ(weke-ʻula), モアノ(moano), クム(kūmū) が普通でしたが、中でもクムが好まれたようです(*2)。
これらの3種の魚の英語名称はいずれも"goatfish"で、ヤギ(山羊)のように髭(ひげ)を持つことに由来します。



(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev.A.O.Forbes, p.186-192.
(*2) Margaret Titcomb(1972); Native Use of Fish in Hawaii, P.45.