256 アイ カナカ(11.王クパらはサメの餌食に)

(前回からの続き)

嵐が渓谷に襲いかかる

風が吹き始めました。

雨が激しく降り注ぎ始めました。
そして間もなくすると猛烈な嵐が、この呪われた渓谷に襲いかかりました。

谷底は隅々まで、荒れ狂った激流に満ち溢(あふ)れています。

その激流は凄(すさ)まじい勢いで進みながら、ありとあらゆるものを押し流して、
河口に広がる帯状の低地にまき散らしました。

王クパらはサメの餌食に

そしてこの猛烈な嵐は、王クパとその民(たみ)を打ちのめして、一網打尽(いちもうだじん)に破滅させたのでした。

そうです。彼らは一人残らず海の中へと押し流されて、
サメたちに貪(むさぼ)り食われてしまったのです。

カマロと家族だけが生き残る

あらゆるものが破壊されてしまい、残ったのはカマロとその家族だけでした。
彼らの周囲はどこを見ても、恐怖と破滅が蔓(まん)延していました。

しかし聖なる囲いの中にいた、彼らだけは無事でした。
洪水が敢(あ)えてそれに、触れようとしなかったからです。

アイ カナカの港

と言うことで、この恐ろしい出来事が起きたプコオの港は、長い間、「アイ カナカ(人食い)」 の名で知られていました。

そしてこの地域の住民の間に、こんな諺(ことわざ)が言い伝えられているのです。
「マプレフ渓谷を虹が渡ったら、ワイアコロアに気をつけろ。」

---それは 雨と風の激しい嵐で、時として、突然あの渓谷を下ってやって来ます。

(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev.A.O.Forbes, p.186-192.