290 オアフヌイ (13.そして誰もいなくなった)

(前回からの続き)

キリキリウラは石に変わる

キリキリウラが倒れたのは、川を隔ててレフアの木と反対側でした(*1)。
そして、彼女はそこで石に変わったと言われています。

それは今でも 「これがその石です。」 と指し示すことが出来ます。
川の流れに削られた谷の斜面で、この石はバランス良く周囲に溶け込んでいます。

そして今や、ハワイ人観光客のお目当ての一つになっています。

王や召使いも石になった

頭の無いオアフヌイの遺体は、彼が殺されたその場所に放置され、誰からも見捨てられていました。

しかし時が経(た)つにつれて、彼もまた石になった、と言われるようになりました。
そうです、その石は彼の恐ろしい罪に対する、神々の怒りと憎悪の証(あかし)とされたのです。

召使いたちの運命も、キリキリウラと同じでした。
王の命令に従って若い王子の殺害・調理に、少しでもかかわった召使いたちは一人残らず、キリキリウラの死と同時に、彼女と同じように石に変わったのでした。

彼らの姿勢は様々で、ある者は身をかがめ、ある者はひざまずき、そしてまたある者は座っていました。

そして誰もいなくなった

他の王家の家臣たちは皆、低位の首長たちや護衛兵たちと共に、恐ろしさと嫌悪感でそこから逃げ出しました。
こうして、かつてオアフ島の首長たちが住んだ聖なる王家の本拠地は、見捨てられ人けが無くなったのでした。

そして今なお、偉大なる神カネの祟(たた)りが、この荒涼とした地を覆(おお)っている、と信じられています(N.1)。
その証(あかし)として、人々は強くこう主張しています。

「確かにこれは皆、何百年も前に起きた事だ。
しかしこの出来事の後、そこには、今の今までずーっと、誰も住んでいないんだ。」

(終わり)
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(ノート)
(N.1) カネ(Kane):
ハワイには4大神と呼ばれる4人(柱)の神がいます。クー(戦いの神)、ロノ(農耕の神)、カネ(創造の神)、カナロア(海の神)です。
その中でカネは最高神で、神々が住む天界や人間が住む地上を創造し、さらに、地上には海・動植物・人間を創造したとされています。



(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.