329 魚と迷信 (3. アナエホロ (1) 回遊ルート)

(前回からの続き)

クパなら誰もが知っている

アナエ ホロはボラ科の魚の1種であり、浅海や池に住む種とは異なります(*1)(N.1)。
そして、その習性に関する以下のお話しは、オアフ島のクパ(地元の人)ならば、誰もが良く知っています。

真珠湾から風上に向かい、コオラウ山脈沿いに北上する

アナエ ホロの故郷は、真珠湾のホノウリウリにある、イフオパラアイと呼ばれる所です。

彼らはこの島の反対側に向かって、島の周りを定期的に旅しています。
出発点はプウロアで、ここから風上に向かって進みます(N.2)。



そして順番に、クムマヌ、カリヒ、コウ、カリア、ワイキキ、カアラワイなどを通ります。
その後はコオラウ側に回って北上し、ライエで終点です(N.2)。


そしてそれから同じルートを通って、彼らの出発点に戻って来ます。

この魚は、ワイアナエ、カエナ、ワイアルア、ワイメア、それにカフクでは捕(と)れません。

なぜならアナエ ホロは、こちらのルートは通らないからです。
しかしこれらの場所では、他の種類の魚がたくさん捕れます。

なぜこうなるのでしょう? これからその理由(わけ)をお話ししましょう。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) アナエ ホロ(anae-holo):
アナエ ホロは、ハワイの代表的な出世魚であるアマアマ('ama'ama)の呼称の1つです(*2)(*3)。
前半のアナエ(anae) は成魚(体長30cm以上)、後半のホロ(holo) は回遊、を示す語です。従ってアナエ ホロは、アマアマ('ama'ama)が成長して回遊している時の呼称です。
アマアマの英名はミュレ(mullet)、和名はボラ、そして学名は"Mugil cephalus"です。
(N.2) 風上(windward), コオラウ(koolau):
日本語の風上に対応するハワイ語がコオラウで、共に、風が吹いて来る方角を示す語です。
ハワイは貿易風の地域にありますから、通常は東風が吹いています。従って、風上すなわちコオラウとは、東の方角を意味します。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 25. Fish Stories and Superstitions, Translated by M. K. Nakuina, p.269-274.
(*2) M. Titcomb(1972): Native Use of Fish in Hawaii. p.64.
(*3) M. K. Pukui, S. H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.