331 魚と迷信 (3. アナエホロ (3) 兄が贈ってくれた魚)

(前回からの続き)

魚の群れが男の後を追う

男は指示された通りに出発し、一方、イフオパラアイは妹に魚を贈るよう、魚の神クウラにお願いしました(*1)。

そして男が家へ向かって、指示通りに長い旅をしていた時のことです。
海では砕ける波の中で、魚の群れがずーっと男の後を追い続けていました。

彼はイフオパラアイの言葉に、完全に従った訳ではありませんでした。

というのは、彼は余りにも疲れたので、途中で腰を下ろすことがありました。
ところが驚いたことに、そんな時はいつも、魚も一緒に休むのでした。

人々は魚の群れを見ると、喜んで捕まえに行きました。

この時の彼は、この群れが自分の物であることを、知りませんでした。
ですから当然ながら、人々が捕まえていたのは自分の魚だった、ことにも気付きませんでした。

兄が贈ってくれた魚ですよ

家に着くと彼は妻に会いました。

そして、魚を一匹も持ち帰らなかった、と伝えました。
しかし道中ずーっと沢山の魚を見かけた、とも話しました。

そして彼女に、あのアナエ ホロの群れを指差して見せました。
ちょうどその時、あの群れは彼らの家の横に並んで休んでいたのでした。

すると彼女は彼にこう教えました。
「まさにあれが私達の魚です。義兄イフオパラアイが贈ってくれたのです。」


彼らは思う存分に魚を捕りました。そして、彼らが願望していた物を全て手に入れました。
すると残った魚たちは直(す)ぐに、来た時と同じルートをたどって、イフオパラアイが住むホノウリウリへ帰って行きました。

それ以来ずっと現在に至るまで、この魚アナエ ホロは、毎年同じようにこの地にやって来ては、また帰って行きます。
そうです、10月頃から姿を見せはじめて、翌年の3月から4月には見られなくなります。

妊婦や幼い子には食べさせるな

妊娠中の母親は、アナエ ホロもアホレホレも、食べることを許されません。
生まれて来る子が、悲惨な目に遭うのが怖いからです。

ですから無事、出産を終えるまでは、彼女らはこれらの魚に決して触れません。

それだけでなく、未だ幼い子供たちにも、これらの魚はあげません。
彼らが自分の意志でその魚をつまみ、そして食べれるようになって初めて与えられるのです。


(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 25. Fish Stories and Superstitions, Translated by M. K. Nakuina, p.269-274.