334 魚と迷信 (5. ホウ、いびきをかく魚)

(前回からの続き)

人間のような「いびき」

ホウは浅瀬に棲(す)む魚です(*1)(N.1)。

物音もせず静まり返った夜に、 松明(たいまつ)を灯(とも)して、漁(りょう)をしているとしましょう。
そんな時、もしもホウが眠っている棲(す)み家に近づけば、彼らのいびきが聞こえて来るでしょう。

そのいびきたるや、あたかもホウが人間であるかのようです。
ところがそれは、小さくて色鮮やかな魚なのです。


そしてまた、ある種のサメたちもホウと同じです。
浅瀬で眠りながら、楽しそうにいびきをかくのを、時々、聞くことが出来ます。

怪しい話は載せない

さて、ハワイの島々で知られている魚には、大変多くの種類があります。
ですからハワイには、上にご紹介した以外にも、魚にまつわるお話しが沢山あります。

もしもそれらを寄せ集めれば、きっと興味深いお話し集が出来るでしょう。
しかしその代わりに、どの国でも作れそうな 「魚臭くて怪しい」 本になるでしょう。


(終わり)
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(ノート)
(N.1) ホウ(hou):
ホウはハワイ語で、ベラ科(Labridae) ニシキベラ属(Thalassoma)の中の、数種の魚の総称です。緑色をベースにした体には、赤色または青色の横縞模様が、頭部から尾まで伸びています(*2)(*3)。
これら色彩の特徴等から、赤色模様の魚の学名は "Thalassoma purpureum"と推測されてます。英名は"surge wrasse"、また和名は「キヌベラ」で沖縄でも見ることが出来、その派手な色彩から釣り人の間で話題になることもあるようです。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 25. Fish Stories and Superstitions, Translated by M. K. Nakuina, p.269-274.
(*2) M. K. Pukui, S. H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.
(*3) Margaret Titcomb(1972):Native Use of Fish in Hawaii. p.78.