336 旧約聖書の歴史に似た伝説 (2. 天と地を創る)

(前回からの続き)

混沌(こんとん)に光が差し込む

「これらの神々は、永遠の過去から、混沌、いやそれ以前から存在しました(*1)(N.1)。
これをハワイ人の言葉で表現し、その和訳をカッコ書きで付せば、こんな感じです。

 『マイ カ ポ マイ(N.2) 』
 (夜、闇(やみ)、混沌の時代から)

そこには 「ポ」、夜、もしくは混沌があり、辺(あた)りに漂(ただよ)って、あらゆる物を包み込んでいました。
神々は自らの意志で、その「ポ」を蹴散(けち)らし、粉々に砕き潰(つぶ)しました。

すると、そこに光が差し込みました。


天と地を創(つく)る

それから神々は、天を創造しました。
その数は3で、彼らが住むための場所です。

また地を創造し、彼らの足台にしました。
ヘ ケエヒナ ホヌア ア カネ です(N.3)。

次に太陽、月、数々の星を創造しました。

そして、彼らに仕える数多くの天使、または聖霊、
-- イ キニ アクア -- を創造しました。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 「 (かぎ括弧(開始記号)) :
文頭のかぎ括弧は引用の開始記号です。ここから引用文が始まり、以後、延々と続きます。その出典はフォルナンダーさんの著書「ポリネシア民族」の第1巻です(*2)。
(N.2) マイ カ ポ マイ (mai ka po mai) :
ハワイ語の句 "mai ka po mai"の中核を成す語が "po"で、「夜、暗闇、神々の領域、混沌」を意味します。 "ka" は定冠詞(英語の"the")、"mai (---mai)" は英語の"from"です。従って、これらを合成した句 「マイ カ ポ マイ」は、「暗闇の混沌とした神々の領域から」と言った意味です(*3)。
(N.3) ヘ ケエヒナ ホヌア ア カネ (he keehina honua a Kane) :
"he ke'e.hina honua a Kane" もハワイ語の句です。最後の語 "Kane" が ハワイ4大神の中の最高神「カネ」で、"keʻe.hina" は「足台」、"honua" は「地」、また "he" は不定冠詞(英語の"a")、"a" は英語の"of"に相当します。従って、これらを合成した句 「ヘ ケエヒナ ホヌア ア カネ」は、「神カネの足台である地」と言った意味です(*3)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 1. Legends Resemblng Old Testament History. By C. M. Hyde, p.15-30.
(*2) Abraham Fornander(1878): An Account of The Polynesian Race, Vol.1. p.62- .
(*3) M. K. Pukui, S. H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.