338 旧約聖書の歴史に似た伝説 (4. ウェラ-アヒ-ラニの伝説)

(前回からの続き)

動物の創造

「動物の創造については、それらのチャントは何も触れていません(*1)。
しかし、真正(しんせい)な伝承をベースにして、次のように推察できるでしょう。

『地が創造された時、もしくは、湿気を帯びた混沌から姿を現した時、そこには既に植物や動物(たち)がいた(N.1)。』

そしてその伝承の中で特別に名前が上げられ、『カネ神が創造した』とされたのが、次の動物たちです。
 豚(プアア)、犬(イリオ)、トカゲもしくは爬虫類(モオ)(N.2)。」


ウェラ-アヒ-ラニの伝説

「なお、これとは別にもう一つ、一連の伝説があります。
それが ウェラ-アヒ-ラニで、そこではこんな風に言われています。

『カネは、当時の人々が余りにも邪悪だったので、この世を炎で焼き亡ぼしてしまいました。

そして、彼がこの世を現在の姿に創り上げたのは、その後のことでした。
そこではクウ(神)とロノ(神)の助けを借りながら、最初の人と最初の女性を創造しました。

その方法は、前述の伝説クムホヌアでお話したものと、ほぼ同じです。』

またこの伝説の中では、人はウェラ-アヒ-ラニ、そして女性はオウェと呼ばれます。」


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 混沌(chaos):
この文は旧約聖書の天地創造、第1章2節における状況を解説していると考えられます。
すなわち、ここで言う「混沌」という語は、 「混乱や虚しさ」を表す語ではなく、むしろその逆に、やがて天と地に現れる生命を内に抱き、創造の悦びを秘めている語、ということのようです(*2)。
(N.2) 豚(プアア)(hogs(puaa))等:
「豚(プアア)」等 において、括弧内(プアア)はハワイ語名です。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 1. Legends Resemblng Old Testament History. By C. M. Hyde, p.15-30.
(*2) 日本学生宣教会(2014): Small Voice細き聲,聖書研究//創世記1章2節/(9/12).