360 旧約聖書の歴史に似た伝説 (26. 伝説の大元は未だ謎)

(前回からの続き)

「悪」とは神への反抗だ

ハワイ神話のカナロアは、ある時は堕天使として偉大な神々と対立し、またある時は悪霊やこの世の死者の霊になります。
これと比較するとヘブライの伝説は、悪の原理の存在について、より曖昧(あいまい)で不明確です。

創世記の蛇、ヨブ記のサタン、イザヤ書のヒレル、黙示(もくし)のドラゴン ---
これらのお話にはどれも皆、同一の思想が隠されています。


すなわち、罪、死、悪、および諸々の災いの第1の原因は、神の命令に従わずに反抗した事にある、と暗示しているのです。

かつては1つの壮大なドラマ

これらは元々は1つの壮大なドラマでしたが、ある時期に幾つかのシーンに分割されて、複数の伝説になったように思われます。
すなわち、昔々、全人類の注目の的だった1つの壮大なドラマがあった、と言うことのようです。

そして不思議なことに、それらの中でも最も大意が明確で、かつ最も筋が通っているものが、これまでの所、ポリネシアの伝承の中から見つかるのです。

大元(おおもと)は未だ謎

悪魔が天国と地上で活動する伝説について、その起源は誰だ? と尋ねても恐らく無駄でしょう。

これらの伝説を比較すると、外見上の構想の一体感に加えて、注目すべき数多くの一致点があります。

とは言え、文調、細部および表現方法が、余りにも大きく異なるので、
その中の1つの伝説が他の何れかの模倣だとは、とても考えられません。

恐らくそれは、カルデア人、ポリネシア人、およびヘブライ人に、同じようにして伝わったのでしょう。


しかし彼らが直接、伝説の大元から受け継いだのか? それとも、彼らよりも前に受け継いだ人々を介したのか?
これについては、現在の歴史は何も言及していません。」


(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 1. Legends Resemblng Old Testament History. By C. M. Hyde, p.15-30.
(*2) Abraham Fornander(1878): An Account of The Polynesian Race, its orgin and migrations and --, Vol.1. p.85.