361 民話 ヒクとカウェル;ルア オ ミルの場所(1.ワイピオで霊たちが行進)

(新しいお話しの始め)

入口はワイピオ渓谷にある

ヒクとカウェルのお話では、ルア オ ミルの入り口はホルアロアの沖で、カイルアの南方約4kmほどの所にあります(*1)。


しかし地元の人々は、通常、こんな風に説明しています。
「ルア オ ミルの入り口は、あの素晴らしいワイピオ渓谷河口の、ケオニと呼ばれる所にある。

そしてその場所は、ずーっと昔に砂で覆われてしまった。
そのため、地上から死者の世界に通じる小径(こみち)は、隠れて見えなくなっている。」

地元の人々がオイオと呼ぶ霊たちの行進は、「毎年、厳(おごそ)かにマヒキ道路を下って進み、この地点でルア オ ミルに入る。」と言われています。

霊たちの行進に遭遇した

最近ワイメアに住んでおり、この上なく正直だと評判のある男が、はっきりと言いました。
「30年前、いや、それよりもっと前に、私は本当にその霊の一団を見た。」

それはある日の夕方、彼がこの道を上って歩いていた時のことでした。
たまたま少し離れた所に、オイオが現われるのを目撃したのです。

「万一、彼らに出くわしたならば、その者は死なねばならぬ。」
と言うことを、彼は知っていました。

そこで彼はある木の影に、そっと身を隠しました。
そして目の前のそら恐ろしい光景に、恐怖に身を震わせながら、密(ひそ)かに目を凝らしたのでした。

するとそこには、戦いの最終的な勝利者である、カメハメハがいました。

さらに、彼に従う全ての首長や戦士たちが、勢揃(せいぞろ)いしています。
この何千もの英雄たちは皆、その昔、名を馳(は)せた勇者です。

何もかもが不気味に静まり返っている中で、彼らはピッタリと足並みを揃えて、行進して行きました。
それから、森を通り抜けてワイピオ(渓谷)へ下ると、見えなくなってしまいました。


(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu; Location of the Lua o Milu, J.S. Emerson, p.48-50.