362 民話 ヒクとカウェル;ルア オ ミルの場所(2.アケアとミルの王国)

(前回からの続き)

このお話しに関連して、アレキサンダー教授は親切にも、以下の情報を提供して下さいました(N.1)(*1)(*2)。

死者の霊はどこへ行く?

「ワイピオ渓谷という場所は、この島の最初の王アケアとミルの居所として、ハワイの歌や伝承に頻繁に取り上げられています。---(中略)---

ある人はこう言います。
『死者の霊はポ(闇の地)に行く。そしてそこで、完全に消滅させられるか、そうでなければ神々に食べられてしまう。』

そしてまた、ある人はこう言います。
『何人かはアケアとミルが支配する地に行く。』
ここで、彼らが言うアケア(またはワケア)は、ハワイの最初の王でした。

アケアとミルの王国

アケアが亡くなって、我々が居たワイピオにおける、彼の治世が終わった時のことです。
彼は、はるか下方にあるカパパハナウモク(島を支える岩もしくは地層)、と呼ばれる地まで降りて行きました。
そしてそこに、一つの王国を設立しました。

彼の後継者であるミルは、ハマクアで国を治めていましたが、亡くなるとアケアの居る地に降りて行きました。
そして、その地を治める権限を、彼と分け合いました。

彼らの地は暗闇、そして彼らの食べ物はトカゲと蝶です。

彼らが水を飲む川の流れがいくつかあります。

そしてある人たちは、こう言います。
『大きなカヒリと、平べったく伸びたコウの木があり、彼らはその下で横になった(N.2)。』」


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) アレキサンダー教授(Professor W. D. Alexander) :
アレキサンダー教授は、1833年、ホノルルに生まれ、米国エール大学を卒業後ハワイに戻り、オアフ・カレッジ(現在のプナホウ・スクール)の教授に就任しました。
本文中の 「教授が提供した情報」とは、エリス(W.Ellis)およびディブル(S.Dibble)の著書から関連箇所を抜粋したものです。
(N.2) カヒリ( kahili) :
かつてカヒリは王族の象徴とされており、棒の先端部分に鳥の羽を縛り付けて、円筒状に装飾して作られました。大きさは、手に持つ小さな物から、身長の数倍におよぶ大きな物までありました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu; Location of the Lua o Milu, J.S. Emerson, p.48-50.
(*2) William Ellis(1826): Narrative of a tour through Hawaii, or Owyhyhee, p.339-342.