363 民話 ヒクとカウェル;ルア オ ミルの場所(3.天国か地獄か?)

(前回からの続き)

天国か地獄か?

「あの世における幸不幸について、彼らは幾つかのとても不明瞭でわかり難い、概念を持っています(*1)(*2)。
そして人の死後について、こう言います。

『まず最初に、亡霊はワケアが治める地に行く。
ここでワケアとは、彼らの最初の先祖、と称せられる人物の名前。

もしもその亡霊が、現世で宗教的および社会的儀式を遵守(じゅんしゅ)して来たならば、亡霊は歓待されそこに留まることを許される。』

そこには棲み家があり、快適で居心地が良く、そして喜びが溢(あふ)れていました。

しかし、もしも現世での信仰心が厚くなかったら、霊を迎え入れる者は誰一人いませんでした。
そして霊は為す術(すべ)もなく、この地の下にある悲惨な地、ミル、に飛び込んだのでした。

このように、不幸な霊たちが悲惨な地に向けて飛び込んだ、と考えられた断崖絶壁が幾つかありました。

なかでも、次の3つが特別でした。
1つはハワイ島の最北端にあり、もう1つはマウイ島西部の端、そして第3番目はオアフ島北部の岬にありました。」

ポリネシアの各地にあるレイナ

オアフ島北西部にある岬の近くに、レイナ カウハネと呼ばれる岩があります。
そこでは死者の霊たちが、ハデス(黄泉の国)に向けて降りて行きました。


ニュージーランドでは、上のハワイと同じ名前をノース岬に付けて、 「レイナ」(飛び込み場)と呼んでいます。

またマルケサス諸島の人々も、彼らの島々の中の一番北端の島について、似たようなことを信じています。
そして彼らの火山の火口(アヴェルヌス)に、ハワイと同じ名前を付けて、「レイナ」と呼んでいます。

(終わり)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu; Location of the Lua o Milu, J.S. Emerson, p.48-50.
(*2) Sheldon Dibble(1843): History of the Sandwich Islands. Lahainaluna, Press of the Mission Seminary, p.99.