374 聖なる地を訪ねる(2.カリマが両目を開ける)

(前回からの続き)

なぜ年老いた私を残したのですか?

「ああ、どうして。」 彼女は叫びました。
「何故(なぜ)神さまは私を残したのですか?

私は老いぼれで、ずいぶんと年をとっています。
背中は曲がり、目は良く見えなくなって来ています。

私は働くことが出来ません。

年を取り過ぎて体が弱いので、海で魚釣りを楽しむことも出来ません。
また、木々の下でダンスをしたり、ご馳走を食べることも出来ないのです。

しかし、この私の子は、これらのどれも皆大好きだったし、とても幸せでした。


それなのに何故(なぜ)、彼女が神のもとに連れて行かれ、そして、私、こんなに役立たずの私が、残されているのですか?」

カリマが両目を開ける

そして再び、あの死者を悼(いた)んだむせび泣き、うめくような声が静寂を破りました。
そのうめき声は、ドアの前の木々の下に集まっていた、友達たちに届きました。

この母の主張は友達たちに受け入れられ、さらに彼らにより、繰り返し広められました。
そして遂(つい)に、最も冷酷非情な人さえもが、母の主張に態度を和らげ、哀れみの情を示したのでした。

彼らがマットの上で円形に座り、死者を見つめながら年老いた母の話を聞いていた時のことです。
突然カリマが動いて、ながーくひと呼吸すると、両目を開けたのです。

彼らはこの不思議な出来事に、びっくり仰天しました。
とは言うものの、彼女が再び彼らの元に戻って来たので、この上なく幸せな気持ちでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅶ. A Visit to the Spirit Land, or, The Strange Experience of woman in Kona, Hawaii. Mrs. E.N. Harly, p.58-62.