376 聖なる地を訪ねる(4.喜びが溢れる村)

(前回からの続き)

喜びが溢(あふ)れる村

私は自分の家と村を後にすると、次の村に向けてひたすら歩き続けました(*1)。

そしてその村に着くと、幾つかの人だかりに出くわしました。
おー、何と沢山の人たちでしょう!

私が知っていたその場所は、家が数軒ほどあるだけの、小さな村でした。
ところがいざ来て見ると、そこは素晴らしく大きくて、何百軒もの家があり、何千人もの男たち、女たち、そして子供たちがいました。

何人かは私の知い合いで、私に話しかけて来ました。

--- それが、どうも奇妙なのです。
何故(なぜ)って、その人たちは既に亡くなっていたのですから。

--- そして、そこにいたほとんどは、私の知らない人たちでした。

彼らは皆、大変幸せそうでした!
彼らには心配ごとなど一つも無く、彼らを悩ませることは何も無いようでした。

誰の顔にも、大きな喜びが溢れていました。
そして誰の口からも、幸せそうな笑い声と、明るく愛情深い言葉が聞こえて来ました。」

その次の村も同じだった

「私はこの村を後にすると、その次の村に向けて歩き続けました。

それでも私は少しも疲れませんでした。
どうやら、歩くのはお安い御用だったようです。

その次の村もまた同じで、何千人もの人がいて、誰も彼もが喜びに満ちて幸せそうでした。
そしてその何人かは、私の知り合いでした。

数人の人に声をかけると、また、前の村の時と同じことが起きたのでした。


(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅶ. A Visit to the Spirit Land, or, The Strange Experience of woman in Kona, Hawaii. Mrs. E.N. Harly, p.58-62.