377 聖なる地を訪ねる(5.私も喜びに満たされた)

(前回からの続き)

私も喜びに満たされた

どうやら私は火山、あの「ペレのピット」 、に向かう途中だったようです(*1)(N.1)。
そして、私は一休みしたかったのですが、出来ませんでした。」


「その道に沿ってずーっと、家が並び、そして人々がいました。
私はこれまで、そこに人が住んでいることを、全く知りませんでした。

小さな肥(こ)えた土地には、どこも皆たくさんの家があり、幸せな人々が大勢、いや実に大勢いました。
私もまた、あまりにも大きな喜びで一杯(いっぱい)だったので、胸がときめいて、死んで良かったと思いました。」

南の果てまで幸せな人ばかり

「やがて、私はサウス・ポイントにやって来ました(N.2)。
するとそこもまた、物凄(ものすご)い人だかりでした。


この不毛の岬には、素晴らしい村がありました。
私は幸せそうなアロハで迎えられると、そのまま先に進みました。

カウのどこに行っても同じことで、私はずーっといつも以上に幸せでした(N.3)。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ペレのピット(Pele's pit) :
「ペレのピット」 は 、キラウエア火山の主要カルデラ(Kilauea Caldera)のハワイ語名カルアペレ(Kaluapele)を英語に訳した語です。ここで、 Kaluapele = Ka.lua + Pele = ピット + 女神ペレ です。なおこのハワイ語の英訳は、厳密には "the pit of Pele"とされています。そして、"Pele's pit"と言う呼称は 、キラウエア火山の南方沖合の海底火山(旧称)ロイヒに与えられています。
(N.2) サウス・ポイント(South Point) :
サウス・ポイント は、ハワイ島最南端の岬であり、かつハワイ州を含むアメリカ合衆国50州の最南端でもあります。ハワイ語名はカラエ(Ka Lae)で、Kalae = Ka + lae = the + cape(or point) = 岬 です。
(N.3) カウ(Kau) :
カウ は、かつてハワイ島を6つに分割した、行政区画(モク)の中の一つでした。その中でカウは島の南西部を占め、キラウエア火山やサウス・ポイントを擁(よう)する大きなモクでした。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅶ. A Visit to the Spirit Land, or, The Strange Experience of woman in Kona, Hawaii. Mrs. E.N. Harly, p.58-62.