(前回からの続き)
彼らが野良仕事から家に戻って来ると、その子は見たところ死んだように、息をせずに横たわっていました。
最愛の子を亡くした深い悲しみで、大きな悲嘆の声を発した後、彼らは遺体を火葬するために火を起こしました。
それから6ヶ月が過ぎると、時が心の傷を癒やして、彼らは嘆き悲しむのをやめました。
するとその時、突然、彼らは雷鳴と稲妻の嵐、さらには地面の揺れに襲われ、ひどく驚かされました。
そしてその真っ只中に、彼らははっきりと、その子の叫び声を聞きました。
「あー、来て。こっちに来て、僕を連れてって!」
彼らはその子が、これで2度に渡って再生したことに、大喜びしました。
そして、この奇跡は彼らの女神が起こしたのだと考えて、こう決意したのでした。
「もしも、この子が再びトランス状態に陥(おちい)っても、我々が心配する必要はない。
なぜなら、我々の女神がこの子を目覚めさせ、生き返らせるだろうから。」
「あなた方が見た「驚くべき出来事」は「トランス」です。
私が昏睡状態に入ると私の魂は即座に、女神ポリアフと共に大空高く飛び出します(N.2)。
我々は無数の魂の一団ですが、飛行距離において、私は他の魂たちに優(まさ)っています。
私は一日で、このハワイ島を一巡出来ます。
マウイ島、オアフ島そしてカウアイ島も同じで、かつ、再び戻って来ることが出来ます。
あちこち飛んでいるうちに、全ての島の中で、カウアイ島が最も豊かだと知りました。
なぜなら、食べ物や魚が十分にあり、そのうえ水も豊富だからです。
私は大人になるまでは、あなた方と一緒に、ここに留まるつもりです。
それから私はきっと、カウアイ島に向けて旅をして、その地で残りの人生を過ごします。」
(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) イキキ(Ikiki):
原文では ”Ikiki"と綴っていますが、この語はハワイ語 の"Iki-iki"を指していると思われるので、以下では後者「イキイキ(Iki-iki)」について解説します。かつてのハワイでは、1年を夏(Kau)と冬(Hoo-ilo)の2つの季節に分け、さらに夏と冬の各々を6つの月に分けていました。そこでは、イキイキ(Iki-iki)は夏の最初の月で、5月に相当しました(*2)。
(N.2) 女神ポリアフ(goddess Poliahu):
ポリアフは雪の女神で、ハワイ島に聳(そび)えるハワイ諸島の最高峰(標高4,205m)、マウナ・ケアに住むと言われています。ハワイ語で 「マウナ(mauna)」は「山」、「ケア(kea)」は「白い」を意味することからわかるように、マウナ・ケアの山頂は冬期には雪に覆われます。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, IX. Kalelealuaka. Dr. N. B. Emerson, p.74-106.
(*2) David Malo(1898): Hawaiian Antiquities, translated by N.B.Emerson, Honolulu Hawaiian Gazette. Chap.Ⅻ. The Divisions of the Year.
カオペレは2度再生した
それから6ヶ月後、新しい月イキキの、最初の日(ヒロ)のことでした(*1)(N.1)。彼らが野良仕事から家に戻って来ると、その子は見たところ死んだように、息をせずに横たわっていました。
最愛の子を亡くした深い悲しみで、大きな悲嘆の声を発した後、彼らは遺体を火葬するために火を起こしました。
それから6ヶ月が過ぎると、時が心の傷を癒やして、彼らは嘆き悲しむのをやめました。
するとその時、突然、彼らは雷鳴と稲妻の嵐、さらには地面の揺れに襲われ、ひどく驚かされました。
そしてその真っ只中に、彼らははっきりと、その子の叫び声を聞きました。
「あー、来て。こっちに来て、僕を連れてって!」
彼らはその子が、これで2度に渡って再生したことに、大喜びしました。
そして、この奇跡は彼らの女神が起こしたのだと考えて、こう決意したのでした。
「もしも、この子が再びトランス状態に陥(おちい)っても、我々が心配する必要はない。
なぜなら、我々の女神がこの子を目覚めさせ、生き返らせるだろうから。」
私の魂は大空高く飛ぶ
しかし後になって、その子はこう言って、彼らの誤りを正したのでした。「あなた方が見た「驚くべき出来事」は「トランス」です。
私が昏睡状態に入ると私の魂は即座に、女神ポリアフと共に大空高く飛び出します(N.2)。
我々は無数の魂の一団ですが、飛行距離において、私は他の魂たちに優(まさ)っています。
私は一日で、このハワイ島を一巡出来ます。
マウイ島、オアフ島そしてカウアイ島も同じで、かつ、再び戻って来ることが出来ます。
あちこち飛んでいるうちに、全ての島の中で、カウアイ島が最も豊かだと知りました。
なぜなら、食べ物や魚が十分にあり、そのうえ水も豊富だからです。
私は大人になるまでは、あなた方と一緒に、ここに留まるつもりです。
それから私はきっと、カウアイ島に向けて旅をして、その地で残りの人生を過ごします。」
(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) イキキ(Ikiki):
原文では ”Ikiki"と綴っていますが、この語はハワイ語 の"Iki-iki"を指していると思われるので、以下では後者「イキイキ(Iki-iki)」について解説します。かつてのハワイでは、1年を夏(Kau)と冬(Hoo-ilo)の2つの季節に分け、さらに夏と冬の各々を6つの月に分けていました。そこでは、イキイキ(Iki-iki)は夏の最初の月で、5月に相当しました(*2)。
(N.2) 女神ポリアフ(goddess Poliahu):
ポリアフは雪の女神で、ハワイ島に聳(そび)えるハワイ諸島の最高峰(標高4,205m)、マウナ・ケアに住むと言われています。ハワイ語で 「マウナ(mauna)」は「山」、「ケア(kea)」は「白い」を意味することからわかるように、マウナ・ケアの山頂は冬期には雪に覆われます。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, IX. Kalelealuaka. Dr. N. B. Emerson, p.74-106.
(*2) David Malo(1898): Hawaiian Antiquities, translated by N.B.Emerson, Honolulu Hawaiian Gazette. Chap.Ⅻ. The Divisions of the Year.