425 この地は海に(6.あの雲が私に教える)

(前回からの続き)

神官はこの会合で、家の入口の直ぐ内側に座っていましたが、その時、ちょうど太陽が沈みかけていました(*1)。

それを見ようと振り返った彼は、扉の外の大空をじっと見つめました。
そして小さな雲(アオ・ポコ)が、天空に集まっているのに気付くと、驚きの余り絶叫しました。


「おー、何ということだ! 王の道は広々としており、首長や平民たちで溢(あふ)れている
ところが、私すなわちカフナ、の小道は細い。

おー、王よ! 貴方にはそれが見えないでしょう。

たった今この瞬間にも、あの小さな雲は、貴方がこの国を治める方法を、私に教えてくれています。
そして、それが現実の治世の中で見えて来る日も、そう遠くは無いでしょう。

もしも貴方が私の言葉を心に留めるならば、貴方に、こうお伝え致しましょう。
おー、王よ! 貴方は白髪になるまで、生きるでしょう。

しかし貴方は、私と私の子を殺害する王、になるでしょう。」

神官のこれらの言葉を聞いて、王は暫(しばら)くの間、真剣に熟考を重ねた上で、こう言いました。
「何故(なにゆえ)に、私の治世が短かい、と言うのだ? そして何故に、私すなわち王に貴方が殺される、と言うのだ?」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 20. This Land is the Sea's. Traditional Account of an Ancient Hawaiian Prophecy. Translated from Moke Manu by Thos. G. Thrum, p.203-214.