019 民話 ナウパカ(2.長老を訪ねる)

(前回からの続き)

国一番の長老を訪ねる

王女が涙を浮かべながら話し終えると、王さまは娘の目を見つめて言いました(*1)。
「我が愛する娘よ、お前がそこまで若者を愛するならば、長老に相談してみるが良い。」

その長老とは、この国で一番賢(かしこ)いと評判で、誰からも尊敬されている人でした。
そこで王女ナウパカと若者カウイの2人は、長老を訪ねることにしました。

王女は長老を前に、何ひとつ隠さず一部始終を詳しく話しました。
--- 王女がカウイを心から愛していること、カウイは平民であること、
しかし身分の違いを乗り越えて2人は強く愛し合い、とても離れる事など出来ないこと、-- を。

長老は、2人の真実の愛に深く心を打たれるも、静かに言いました。
  「厳しいカプの掟がある限り、私の力ではどうすることも出来ぬ。
 この島一番の高僧(カフナ)にお願いしてみなさい。」

高僧が住む国へ向かう

その高僧は、王女ナウパカの国から遠く離れた地に住んでいます。
しかしそんなことは、ナウパカとカウイにとって、少しも気になりません。

彼らは、旅の支度が出来ると直ぐ、高僧が住む国に向けて出発しました。
こうして2人は、幾度となく川を渡り峠を越えては新しい国に入り、来る日も来る日も歩き続けました。

(次回に続く)
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[解説] 峠の向こうは隣の国:アフプアア(Ahupua'a)
かつてのハワイでは、山頂から海に流れる川がつくる谷ごとに、自給自足的な社会がありました。
これがアフプアアと呼ばれるもので、言わば一つの小さな国でした。

その境界は谷の両側にある山の尾根と海岸線です。
尾根を横切る峠には、国境(くにざかい)を示す石積みの祭壇が作られました。


(注記)
(*1) Beamer, Winona Desha(1984): Talking Story with Nona Beamer. Honolulu,Hawaii,The Bess Press.