020 民話 ナウパカ(3.高僧に拝謁する)

(前回からの続き)

ナウパカとカウイの2人は幾つもの国を越え、遂に高僧(カフナ)が住むお寺に着きました。
そこは「プウホヌア(pu'uhonua)」と呼ばれ、ちょうど日本の駆け込み寺のような所でした(*1)。

高僧に拝謁(はいえつ)する

プウホヌアの中に入ったナウパカとカウイは、ようやくほっと一息つくことが出来ました。
しかし、大変なのはこれからです。

2人はまず初めに、 この国の王ケアヴェの像に感謝の礼拝をします。

それが済むと改めて気持ちを引き締め、いよいよ高僧のいる建物に向かいました。
もしもカプを破った罪を許してもらえれば、2人は晴れて国に帰り、幸せに暮らすことが出来るのです。

高僧を前にした2人は、はるばる遠くの国からやって来た理由(わけ)を、詳しく説明しました。
その間、高僧は2人の話にじっと耳を傾けていました。

そして話を聞き終えると、ナウパカとカウイの顔を見つめ、おもむろに口を開きました。
「カプを破ったあなた方をどうするかは、神が決めることだ。
  神に祈りお願いするがよい。」

(次回に続く)
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[解説1] プウホヌアはハワイの駆け込み寺
プウホヌアは、周囲に高く頑丈な壁などを廻(めぐ)らし、その中にお寺や住居がありました。

ここに駆け込むのは、ナウパカとカウイのようにカプ(タブー)を破った人だけではありません。
物を盗んだ人、人を傷つけた人、そして、戦場から逃げてきた人などもいました。

ここに居れば、たとえ追手がやって来ても、僧侶たちが追い払ってくれるので安心でした。

[解説2] 神聖な力が人々を守る
プウホヌアでは、お寺に祀(まつ)られた神々も、人々を見守ってくれます。

それだけではありません。
ハワイ島コナ南部にあるプウホヌア・オ・ホナウナウは、かつて王家の土地でした。

そこには王家の霊廟(れいびょう)があり、歴代国王の遺骨が納められていました。
国王の遺骨には絶大な「マナ」が宿り、そのマナが周囲に溢(あふ)れ出ているのです。

プウホヌアでは、これらの神聖な力が一体となり、人々をしっかりと守っています。


(注記)
(*1) Linda Wedel Greene(1993): A Cultural History of Three Traditional Hawaiian Sites on the West Coast of Hawai'i Island, US Dept. of the Interior, National Park Service, September 1993.