052 神話 釣り人マウイ(16. 他バージョン(2/2))

(前回からの続き)

魔法の釣り針と神聖な餌
沖合に出たカヌーの中で、マウイは大切にしてきた釣り針を取り出しました(*1)。
そうです。父のもとから持ち帰った魔法の釣り針、マナイアカラニ(Manaia-ka-lani)です。

それから、その釣り針の先に餌を付けました。
こちらは、母ヒナが飼っていた神聖な鳥、アラエ(Alae)です。

こうして準備が整(ととの)うと、マウイはおもむろに魔法の釣り針を大海原に投げ込みました。

釣り針はアラエを付けて、海の奥深くへと沈んで行きました。
そして、ちょうど海の底に着いたその時、アラエは「海底の大地」に激しく食いつかれました。

ヒナの聖鳥アラエがバラバラに

この光景に驚愕(きょうがく)したのが、アラエを大切に育ててきた、マウイの母ヒナです。

彼女は、アラエを救いたい一心で近づき、その羽根を捕まえました。
そして力の限り引っ張り、アラエを取り戻そうとしたのです。

しかし、ひとたび魔法の釣り針に付けられた餌は、2度と外(はず)せません。
そのため、アラエの体は釣り針に留まり、羽根だけが剥(は)ぎ取られてしまいました。

これを見た魚たちは、餌をめざして群がりました。
そして、アラエの体は魚たちにより、バラバラに食いちぎられてしまったのです。

こうして、海底の大地はバラバラの島々となって海面上に釣り上げられ、現在のハワイ諸島が出来ました。


ハワイ大陸が生まれたかも?

もしも、聖鳥アラエが食いちぎられずに、そのままの姿で残っていたら、どうなっていたのでしょう?

その場合は、釣り上げられる地面も数多くの島々ではなく、一つの大きな陸地です。
ハワイは 「ハワイ諸島」ではなく、「ハワイ大陸」になっていた、と言うことのようです。

(終わり)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.