062 神話 マウイが火を発見(10. もう一つの伝説(4))

(前回からの続き)

火はバナナから起こすんだ

マウイが首をねじるのをやめると、アラエは火の秘密を話し始めました。
「火はバナナの幹から作るんだ。」

これを聞いたマウイは、アラエたちがバナナをあぶり焼きにする光景を思い出しました。
そして、「なるほど、そういうことか。」と納得したのです。

そこでマウイは、アラエの説明に従って、2つのバナナを擦(こす)り合わせ始めました。

一方、アラエは監視の隙(すき)を狙(ねら)って、逃げようと思っていました。
しかしマウイはとても用心深く、少しも警戒を緩めません。

それだけではありません。
いくらバナナを擦っても、出るのは汁だけだと知ると、マウイは大声でアラエを怒鳴りつけました。

タロの茎を擦るんだ

そして再びアラエの首を掴(つか)むと、前よりも更に強くねじり上げました。

すると、アラエは声を引きつらせながら言いました。
「タロの茎を擦(こす)るんだ。」


それを聞いたマウイは、すぐさまタロの茎を擦り始めました。
しかし、その茎も生(なま)で青すぎるため、ただ水が出るだけでした。

またもやアラエに騙(だま)されたマウイは、怒り心頭に発していました。
アラエの頭をつかむと、丸ごとこすり落とさんばかりに、激しく擦ったのでした。

火の起こし方を学ぶ

さすがのアラエもこれが限界でした。
死の恐怖に恐れおののいて、遂に本当のことを話し始めたのです。

アラエはまず、火が宿る木の見つけ方をマウイに教えました。
さらに、色々な種類の木に隠れている、火花を引き出す方法も学びました。

甘い香りで有名な白檀(sandalwood)も、火が宿る木の一つです。
そのハワイ語名は イリアヒ (ili-ahi) です。 "ili"が樹皮、"ahi"は火 なので、イリアヒとは、「火が宿る樹皮」と言う意味です。


(終わり)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.