067 民話 メネフネ(5.モケ・マヌさんが語る(1))


(はじめに) モケ・マヌさんは語り部

かつて文字がなかったハワイでは、伝説は語り部(storyteller)により伝承されていました。

その語り部の一人、モケ・マヌ (Moke Manu,1837年生まれ) さんは、メネフネについても語ったことがあります。
スラムさんがそれを英訳していますので、以下に、概要をご紹介しましょう(*1)。

メネフネは素晴らしかった

言い伝えによると、メネフネはとても素晴らしい人たちでした。

彼らは背は低いが、その行動力はまさに驚異的でした。
そして、彼らはどんな仕事にも、一致団結して取り組みました。

彼らが仕事をする時には、独特のルールがありました。すなわち、
引き受けた仕事は全て、一晩のうちに完成させなければいけないのです。

もし完成出来なければ、そのまま放置してしまいます。
そして、2度とその仕事に取り組むことはありません。

このことから、次ような諺(ことわざ)が生まれました。
『一晩で、そうだ、夜明けまでに仕上げよう!』

メネフネは何時(いつ) どこから来た?


メネフネの歴史については、信頼できる情報が全くありません。
彼らがどこから来たかについても、誰一人知る人はいません。

しかし、伝承によると、メネフネはハワイの先住民、と言われています【解説1】。
パパとワケアの時代が来る前まで、ハワイにはメネフネだけが住んでいたのです【解説2】。

(次回に続く)
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【解説1】 ハワイの先住民とは?
ハワイ諸島はもともと無人島でした。しかしある時期に、西方から移動してきたポリネシア人が、この島に移住し始めました。
その第1弾はマルケサス(Marquesas)諸島から、そして第2弾はタヒチから大勢やって来ました。

ここで言う先住民とは、上の第1弾マルケサスからやって来て、ハワイに住み着いた人々のことです。

一方、現在のハワイで言う先住民とは、上の第2弾タヒチから来た人々の子孫のことです。
今では、マルケサスから来た人々(メネフネ)の姿は見られないからです。

【解説2】 「パパと ワケアの時代が来る前」とは?
パパ(Papa)とワケア(Wakea)は、ハワイ神話に登場する神々です。パパは、パパハナウモク(Papahanaumoku)とも呼ばれます。

パパ(女神)は大地の神、ワケア(男神)は空の神で、この2神がハワイの島々や人を生んで行きます。
ところがパパは、東側の3島まで生むと、一旦タヒチに戻ってしまいます。

すなわちこの神話は、タヒチから来た人たちが、ハワイで国を造るお話しなのす。
従って、「パパと ワケアの時代が来る前」とは、「タヒチからの移住が始まる前」を指すようです。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.