082 民話 メネフネ・ケクプアのカヌー(3.ワオラニの不思議な夜)

(前回からの続き)

ケクプアたちは、ヌウアヌ谷のワオラニの洞窟で一夜を過ごしました(*1)【解説】。
そこで、彼らは不思議な体験をしたのでした。


真夜中にハミングを聞く

洞窟の中で、彼らは真夜中に、人がハミングしているような声を聞きました。

そのハミングは、すぐ近くから聞こえて来るのですが、
不思議なことに、ハミングしている人の姿は、どこにも見えませんでした。

目の前にヘイアウが現われる!

そして、夜明けと共にその声は聞こえなくなり、あたりは再び静寂に包まれました。

しばらくして日が昇ると、 目の前に大きな構造物がそそり立っています。
一夜のうちに突然現れた石積みの構造物に、彼らは驚くと共に狐につままれたような気持でした。

よく見ると、それはヘイアウ(heiau)と呼ばれる、宗教的な儀式のための建物でした。

このヘイアウの遺跡は、今では貴重な文化遺産とされ、ハワイ各地で保護活動が進んでいます。

(次回に続く)
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【解説】ワオラニは神秘的で神聖な地
ワオラニは古くから、神秘的で神聖な地とされてきました(*2)(*3)。
そして、ハワイの島々や人を生んだ神ワケアは、ここで生まれたと伝えられています。

さらに、神のために、初めてヘイアウが建てられたのが、ここワオラニの地だと言われています。
その後も、ヌウアウ谷を見下ろすように、幾つかのヘイアウが建てられました。

ワオラニやヌウアウには、メネフネについても多くの伝説があります。
その中には、この2つの谷に住むメネフネが、大きな石をめぐって争った、と言うお話しもあります。



(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.
(*2) T. Stell Newman et al.(1973): Analysis of the Moanalua National Historic Landmark Application Significance Statement, State of Hawaii, Ⅱ.Theses Analyses, F. First Heiau at Waolani ,and  N. E'pa Land.
(*3) Windy K. McElory et al.(2007): FINAL—Archaeological, Ethnographic, and Biological Survey of TMK: (1) 2-2-051:054, Nu'uanu Ahupua'a, Kona District, Island of O'ahu, Hawai'i.