084 民話 メネフネ・ケクプアのカヌー(5.カヌーはこうして引き出せ!)

(前回からの続き)

メネフネのハミングは、カヌー完成の合図です。
これが聞こえれば、いつでもカヌーを海へ引き出せる、と言うことになります(*1)。

首長のカカエが指示する

首長のカカエは、ケクプアと従者たちに指示しました。
「さあ、いよいよだ! カッコよく決めるんだぞ。」

そして、次のように続けました。

「 カヌーの先端部には、ロープを持った男が2人いるだろう。

そのうちの1人は、カヌーの右舷と左舷の間を、素早く行き来するだろう。
この男がカヌーを引き出す棟梁(とうりょう)で、パレと呼ばれる奴だ【解説 1】。

その後方には、ガイド・ロープを持った男が何人かいるだろう。
このロープはカウェレウェレ(kawelewele)と言って、これでカヌーが横転するのを防ぐんだ(*2)。」

彼らはカヌー作りとその引き出しを、指揮監督するカフナたちなのです【解説2】。

メネフネの地に向けて出発

カカエは、自分の指示を忘れないように、とケクプアたちに念を押しました。
さらにメネフネに会ったら、仕事の注文を出して、カヌーを海に引き出す経路を示すように、と忠告しました。

こうして、カカエの指示を受けたケクプアと従者たちは、メネフネに出逢った地に向けて、再び出発しました。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

【解説1】パレはカヌーを引き出す棟梁
パレはハワイ語の"pale"で、 「守る」 と言う意味です。

そしてパレの役割は、山の中で完成したカヌーを、うまく運搬路に誘導して安全に、海辺まで引き出すことです(*3)。
彼は常にカヌーの動きを監視しており、ある時は作業者に指示し、またある時は自らカヌーを押したりします。

【解説2】カフナは神官や様々な専門家
カフナ(Kahuna)は、当時の階級社会のなかで、支配者階級のアリイに次ぐ地位にありました。
そして、様々な分野の専門家がカフナと呼ばれましたが、大きく分けると、神官、医者、専門職人、呪術者がありました。


ここで言うカフナはカヌーの専門職人なので、より正確に言えば 「カフナ・カライ・ワア(kahuna ka.lai wa'a)」です。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.
(*2) Polynesian Voyaging Society: (Home Page)/Canoe Building/Parts of a Traditional Canoe.
(*3) N.N.Y.Chun & R.Y. Burningham(1995): Hawaiian Canoe-Building Traditions, Revised Ed. Kamehameha Schools Press, Honolulu.