098 神話 ペレとカハワリ(2.そり滑りが始まる)

(前回からの続き)
いよいよ今回から、スラムさんの「ハワイの民話」 の本文に入ります(1)。

カハワリのそり滑り場

その昔、ケアリイクキイと言う王様が、ハワイを治めていた頃のことです。
ハワイ島東部のプナ(Puna)に、カハワリ(Kahawali)と言う首長がいました(*2)。


ある日、カハワリは仲の良い友達と一緒に、そり滑り(ホルア)競争に出かけました。
そこはある丘の斜面で、今でも「カハワリのそり滑り場」と呼ばれている所です。

そり滑り競争はお祭りムード

そり滑り競争を見ようと、大勢の人々が丘の麓(ふもと)を埋め尽くしています。

ハワイアン・ミュージックとフラ・ダンスの一座も、応援に駆けつけました。
競技会の雰囲気を盛り上げて、観客により一層楽しんでもらうためです。

さあ、フラが始まりました。 ドラムの音や歌声も聞こえてきます。
このお祭りムードの中で、カハワリと彼の友達のそり滑りがスタートしました。

女神ペレが女性の姿で競争に挑む


この楽しそうな雰囲気に、火山の女神ペレが熱い眼差しを向けます。
そしてこの競技を見ようと、彼女はキラウエアの山から下りて来ました。

ペレは女性の姿に変身すると、丘の一番高い所に立ちました。
そしてカハワリに向かって、「私とそり滑り競争をしよう!」 と言ったのです。

首長カハワリは、その女性が女神ペレだと知らずに、彼女の挑戦を受けました。
そして2人は一緒にスタートすると、そり滑りの丘を一気に滑り降りたのです。

カハワリがペレを打ち破る

ところで、「ホルア」と呼ばれるそり滑りのそりは、幅が大変狭く出来ています。
そのためバランスをとりながら滑るには、かなり高度なテクニックが必要です。

残念ながらペレは、その方法を良く知りませんでした。
そのため、挑戦相手のカハワリに、無念の惨敗を喫(きっ)したのです。

一方、この競争に勝ったカハワリは、胸を張って丘の斜面を登りました。
そして山のような観客の前に戻ると、拍手喝(かっ)さいを浴びたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅳ. Pele and Kahawali.
(*2) お話しの舞台・登場人物などは、本ブログ 「097 神話 ペレとカハワリ(T. はじめに)」を参照下さい.