099 神話 ペレとカハワリ(3.ペレの怒りが爆発する)

(前回からの続き)

あなたのそりが欲しい

火山の女神ペレと首長カハワリが、2回目の競争を始める前のことです(*1)。

女性の姿に変身したペレは、スタートを前にカハワリに頼みました。
「あなたのそりが欲しい、私にそりを下さい。」

カハワリは、その女性の風貌(ふうぼう)から、彼女は地元の一女性に過ぎないと思いました。

そして、こう答えたのです。
「冗談じゃない! 私の妻でもない君が、私のそりを欲しいって?」

当時のハワイは厳格な階級社会でした。
たとえお祭り騒ぎの中でも、平民が首長(チーフ)のそりを欲しがる事など、決して許されなかったのです。

カハワリがそりに飛び乗る

カハワリは、スタートを遅らせた非常識な彼女に、我慢がなりません。

そりの調整をざっと済ますと、直ぐに数mほどの助走を始めました。
そして勢いに乗った彼は、全力を振り絞ってそりに飛び移りました。

こうして、カハワリは彼女を残したまま、猛スピードで丘を滑り降りて行ったのです。


ペレの怒りが爆発する

とり残されたペレは、カハワリの拒絶に激怒して、激しく地面を踏みつけました。
すると大地が揺れて地震が起こり、丘はずたずたに引き裂かれてしまいました。

そこで、彼女はあるものに呼びかけました。
すると炎が激しく立ち上り、ドロドロの溶岩(ラバ)が噴き出して来たのです。


ペレは、この恐るべき復讐鬼(ふくしゅうき)たちを引き連れています。
そして神秘的な姿に変身すると、カハワリを追って丘を下って行きました。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅳ. Pele and Kahawali.