108 民話 ヒクとカウェル(4.不思議な矢プア・ネが飛ぶ)

(前回からの続き)

矢プア・ネがカイルアに飛ぶ

山を下りたヒクは、遠く離れた丘の上に立ちました(*1)。
そこで、不思議な力を持つ矢プア・ネに、助言を求めようと考えたのです。

彼はプア・ネを高くかざすと、大空の彼方(かなた)に放ちました。
そして、その矢が鳥のように飛ぶ様子を、じっと見つめました。

矢はいつまでも飛び続け、遂に、はるか遠方のカイルアまで来ました。
そして、村の上方の遠く離れた丘に当たったのでした。


次はホルアロアへ

これを見たヒクは、急いでその丘に向かいました。

矢プア・ネを見つけ出したのは、それからしばらく後のことでした。
彼は、再びその矢を高くかざすと、大空に放ちました。

矢は大空を飛び、今度はホルアロアの海岸近くに着地しました(*2)。
そこは、カイルアからは10Kmほど南にある場所です。

「ヒクの水」を飲む

そして、今度その矢が当たったのは、パホイホイ溶岩が固まった不毛の地でした(*3)。


すぐ隣には、「ヒクの水」の名で知られる、ワイカライの水飲み場があります。
ヒクはこの水を飲んで、喉(のど)の渇(かわ)きを癒(いや)しました。

今でも、近くに住む人々は皆ここに来て、人や家畜のための水を汲(く)んでいます。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson.
(*2) ここで言うホルアロアは、かつての土地利用区画アフプアア(Ahupua'a)の呼称です.
その範囲は、フアラライ山頂から流れ出す川に沿って、細長く海岸線まで伸びていました.
(*3) パホイホイ溶岩とは、最も柔らかくて流れやすい(粘性が低い)種類の溶岩の呼称です.
この溶岩は冷えて固まる時に、滑らかな表面に無数のしわを作ります.
そのため、溶岩流の跡地は、縄が敷き詰められたように見えます.