109 民話 ヒクとカウェル(5.【解説】矢プア・ネの由来)

(前回からの続き)

今回は、ヒクとカウェルのお話に登場する、「矢プア・ネ」の由来についてお話ししましょう。

プア・ネは伝統的ゲームに由来する?

ヒクとカウェルのお話には、不思議な力を持つ矢プア・ネ(Pua Ne)が登場します。
その矢は大空を飛びながら、主人公のヒクを正しい方向に導きます。

一方、ハワイの伝統的ゲームの一つに、ケア・プア(Ke'a-pua)があります。
こちらは、花が咲いたサトウキビの茎(くき)を投げて競います。

この2つの呼称を比較すると、前者プア・ネの「プア」は、後者ケア・プアの「プア」と一致しています。

となると、このお話に登場する矢プア・ネは、この伝統的ゲーム(ケア・プア)に由来するのかも知れません。
以下では、ケア・プアとはどんなものかをご紹介しましょう。


マカヒキに大人気だった遊び

・ケア・プアとサトウキビの矢
かつてハワイの新年はマカヒキの時期でした。
それは、今で言えば11月末にあたり、ちょうどサトウキビが花をつける時期です。

ヒクとカウェルのお話の舞台フアラライ山麓は、現在は有名なコナ・コーヒーの産地です。
しかし、かつてはサトウキビの産地でもありました。

ケア・プアと言うゲームでは、このサトウキビを矢として使います(*1)。
花と茎の部分を長さ約60cmに摘み取り、軽やかで優雅な矢に仕上げます。

この矢を使ったゲームは、今では見られませんが、かつては大人気だったそうです。
そして、マカヒキの時期には、子供から大人まで誰もが、この遊びに興じたと言われます。


・丘の上から矢を放つ
ゲームをする人は、矢を持って小高い丘の上に立ちます。

はじめに、前かがみの姿勢で助走して勢いをつけます。
そして、矢がちょうど地表面をかすめるように、前方に放り投げるのです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) David Malo:Hawaiian Antiquities, CHAPTER 52 Sports and Games: Kea-Pua, or Pa-Pua.