110 民話 ヒクとカウェル(6.矢はカウェルの足元へ)

(前回からの続き)

矢はカウェルの足元へ

喉(のど)の渇(かわ)きを癒(いや)したヒクは、今度はホルアロアの村に近づいて行きました(*1)。
そして、再び矢プア・ネを放ったのです。

パワーみなぎるプア・ネは、大空高く飛び立ちました。
そして、溢(あふ)れんばかりの気力で、大きなお屋敷に飛び込んだのです。

そこはコナ地区の首長のお屋敷で、中庭には多くの淑女たちが集まっていました。
矢は、淑女たちの中からプリンセス・カウェルを見つけ出し、その足元に着地しました。

カウェルが矢を隠す

ヒクは彼の矢を拾おうとして、カウェルの方に歩いて行きました。
それを見たカウェルは、ヒクの高貴な身のこなし振りに、すぐに気づきました。

そして、彼女は矢をこっそり隠してしまいました。
茶目っ気たっぷりの彼女が、彼に「矢探しごっこ」を仕掛けたのです。

ヒクが矢プア・ネを呼ぶ

ヒクはカウェルのすぐ近くまで来ましたが、矢プア・ネが見当たりません。

そこで彼は、「プア・ネ! プア・ネ!」と矢に呼びかけました。
すると、矢はすかさず「心配していたんだぞ!」 と答えたのです(*2)。

こうして、カウェルが隠した矢は、いとも簡単に見つかってしまいました。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson.
(*2) 原文の矢の答えは"Ne!"です。ここでは、Ne=fretting(心配する)としました(Ulukau:Hawaiian Dictionaries).