113 民話 ヒクとカウェル(9.コワリのつると死臭のオイル)

(前回からの続き)

コワリの蔓(つる)を集める

ヒクは、まず初めにコワリの蔓を集めました(*1)。
コワリはセイヨウヒルガオ属のツル性植物で、日本ではモミジヒルガオと呼ばれています。


山の斜面には、このコワリがところ狭しと生い茂っていたのです。
彼はカウェルの友達の助けを借りて、山のように沢山の蔓を手に入れました。


さらに、ココナッツ・シェルを一つ用意しました。
殻(から)は半割れにして、隙間なくぴったり合うようにしました。


ヒクの体から死臭が漂う

それが終わると今度は、自分の体にオイルを塗って清めはじめました。
ココナッツ・オイルとククイ・オイルを混ぜたそのオイルは、腐ったような臭(にお)いがします(*2)。


そのため彼の体からは、まるで死体のような、強烈な悪臭が漂うようになりました。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.
(*2) ククイの木の実から採ったククイ・オイルは、容易に酸化して臭(くさ)くなります.
   ククイナッツ・レイが、魔除けになるとされるのは、この臭い匂いのお陰なのです.