114 民話 ヒクとカウェル(10.地の底に向けて出発!)

(前回からの続き)

海の果てに着く

いよいよ彼は仲間たちと一緒に、カヌーに乗って出発しました(*1)。
カヌーには山のような荷物も積み込まれています。

行き先は海の果て。
天空から大空が下りて来て、果てしなく広がる海と出会う地点です。


彼らを乗せたカヌーはひたすら大海原を進み、やがてその海の果てに着きました。

コワリのブランコにまたがる

そして意を決したヒクは、これから苦労を共にするであろう、同志たちに声をかけました。
「さあ、『地の底』へ下(おろ)せ!」

『地の底』とは、ハワイの人々が「ルア・オ・ミル」と呼ぶ、死者の世界のことです。

ヒクはココナツの殻を持って、ブランコにまたがっています(*2)。

そのブランコは、コワリの蔓(つる)で作った、長い長いロープで吊られています。
彼の友達たちはカヌーの上で、そのロープをしっかりと握っています。

地の底に向けて出発!

さあ、いよいよ『地の底』に向けて出発です。

友達たちは、ブランコを吊ったロープを素早く伸ばし始めます。
するとヒクのブランコは、下へ下へと猛スピードで進んで行きました。


(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.
(*2) ハワイのブランコは、私たちが良く乗るブランコとは少し構造が違います.
まず、ブランコの座席を吊り下げるロープ、ここでは蔓、が1本しかありません.
さらに、座席は平らな板ではなく、十字に組んだ棒なので、両足を広げてまたがるように乗ります.