(前回からの続き)
そこには、死者たちの霊がたくさん集められていました。
そうです、そこは「ルア・オ・ミル」と呼ばれる、死者の世界だったのです。
ヒクは、群がる霊たちの中に入って行きました。
霊たちは、新顔のヒクが一体何者なのか、知りたくてたまりません。
そして、彼の耳には色々な声が聞こえてきます。
「ヒャー!これは何という悪臭だ!」
「奴は、死んでからもう大分経っているぞ。きっと、もう腐っているに違いない。」
どうやら彼は、悪臭のする油を塗り過ぎたようです。
土手の上には、死者の世界の王ミルが座り、霊たちを監視しています。
その王さえも、ヒクの悪臭戦略には完全にだまされてしまったのです。
さもなければ、この薄暗い王国に、生きた人間が下りてくることなど、許されるはずもありません。
そのなかでも、あるひとつの霊は全身全霊をかけて、じっと彼を見つめていました。
その霊こそが、彼の愛するカウェルだったのです。
(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.
死者の世界に入る
やがてヒクは、とてつもなく大きな洞窟に入りました(*1)。そこには、死者たちの霊がたくさん集められていました。
そうです、そこは「ルア・オ・ミル」と呼ばれる、死者の世界だったのです。
ヒクは、群がる霊たちの中に入って行きました。
霊たちは、新顔のヒクが一体何者なのか、知りたくてたまりません。
そして、彼の耳には色々な声が聞こえてきます。
ヒクの悪臭がミル王をだます
「奴は、死んでからもう大分経っているぞ。きっと、もう腐っているに違いない。」
どうやら彼は、悪臭のする油を塗り過ぎたようです。
土手の上には、死者の世界の王ミルが座り、霊たちを監視しています。
その王さえも、ヒクの悪臭戦略には完全にだまされてしまったのです。
さもなければ、この薄暗い王国に、生きた人間が下りてくることなど、許されるはずもありません。
カウェルの霊がヒクを見つめる
ヒクと彼が乗ったブランコは、たくさんの霊たちの注目の的(まと)でした。そのなかでも、あるひとつの霊は全身全霊をかけて、じっと彼を見つめていました。
その霊こそが、彼の愛するカウェルだったのです。
(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.