116 民話 ヒクとカウェル(12.カウェルの霊を連れ戻す)

(前回からの続き)

王の許しを得て 2人でブランコに乗る

死者の世界で再会したヒクとカウェルは、互いに相手が愛する人であることに気付きました(*1)。

彼女はミル王の許しを得るが早いか、矢のように彼のもとに走りました。
そして、彼が乗るコワリのブランコに相乗りすると、 2人でブランコを揺らせました。

しかしその彼女でさえも、彼から顔をそむけずには、いられませんでした。
彼の体から、死体のような悪臭が漂っていたからです。

ブランコの揺れは成功のサイン

ブランコは、ハワイの人々の大好きな遊びで、レレ・コワリと呼ばれていました。
彼らは2人一緒に、このレレ・コワリを揺らせて楽しみました。

しかし、それだけではありませんでした。
このブランコの揺れこそが、はるか上方のカヌーで待っていた、友達たちへのサインだったのです。

カウェル救出作戦の成功を知ったカヌーの友達たちは、すばやく2人を引き上げ始めました。

蝶(ちょう)のように飛ぶカウェルを捕える

カウェルは、あまりにもブランコに夢中だったので、引き上げられていることに気付きませんでした。

そしてようやく気が付いたのは、彼女が下を振り返った時でした。
死者の世界の霊たちが、はるか彼方に見えたからです。

すると彼女は蝶のように軽やかに飛び回り、行方を眩(くら)まそうとしました。

しかし、ヒクの作戦は完璧でした。

抜け目ない彼は、絶えず彼女を警戒し続けていたのです。
そして、半割れのココナツ・シェルを取り出すと、ポンと合わせて、その中に彼女の霊を閉じ込めてしまいました。


と、その瞬間、ヒクとカウェルの2人は、すぐ上に浮かぶカヌーの中に引き上げられたのでした。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ.Hiku and Kawelu, J.S.Emerson.