124 民話 カハラオプナ(6.あかんべーの男たち)

(前回からの続き)

あかんべーの男たち

こうして、彼女のこの上ない愛らしさが、この谷の隅々にまで知れ渡ったのでした。
そして、この噂は2人の男、クマヌアとケアワアの耳にも入りました。

彼らはいつも、周囲の人々に迷惑をかけては、眉をひそめられていました。
そして人々からは「マカへレイ」、すなわち「あかんべーの男たち」、として知られていました。

彼らは2人とも、これまでカハラオプナに会ったこともありませんでした。
ところが、彼女の噂(うわさ)を聞いているうちに、自分たちは彼女に恋をしている、と思うようになったのです。

レイで着飾ってワイキキへ

しかし彼らは、自分たちが世間から嫌われる身であることを、知っていました。
そこで、あえて彼女の前に姿を現して、プロポーズしようとは思いませんでした。

その代わりに、彼らはマイレ、ジンジャー、そしてシダを編んで、レイを作り始めたのです【解説】。
そして、出来上がったレイを身に着けて、着飾ったのでした。

彼らはレイで着飾ると、サーフィンを楽しもうと、ワイキキの浜辺に向かいました。



(次回に続く)
[目次へ戻る]

【解説】マイレ、ジンジャー、シダはレイの材料
・マイレ(maile):ハワイ在来種、学名Alyxia stellata
マイレの葉は最も伝統的なレイの材料で、その香り高さが特徴です。
レイの形状は輪ではなく、一本の紐(ひも)のように仕上げます。

今でも誕生日、結婚式、卒業式などには、このレイを贈ってお祝いします。
結婚式で花婿が身に着けるように、男性に贈られるのが一般的です。

フラの世界ではマイレは神聖な植物で、フラの女神ラカ(Laka)に捧げられます。


・ジンジャー(ginger)
レイに使われるジンジャーには、ホワイト・ジンジャーとイエロー・ジンジャーがあります。
ジンジャーの花で作るレイは、手間がかかり高価ですが、その上品な美しさも格別です。


・シダ(fern)
レイに使われるシダはハワイ在来種で、ハワイ名パラパライ、和名イシカグマ、学名Microlepia strigosaです。

パラパライの葉だけでレイを作ったり、他の葉や花と一緒に編み込んだりします。
フラでは、このレイを手首や足首に着けて踊ることも少なくありません。



(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ.Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.