126 民話 カハラオプナ(8.カウヒの怒りと決意)

(前回からの続き)

カウヒの決意

婚約者カハラオプナの悪い噂を聞いても、始めの頃のカウヒは、それを信じませんでした(*1)。

しかし彼の耳には、その噂が何度も何度も入って来ました。
そうして遂に、彼はその噂を信じるようになったのです。

カウヒの心は嫉妬心から震え上がり、やがてそれは、カハラオプナに対する激しい怒りに変わりました。
そして、燃え上がる激怒のなかで、 彼は密かに彼女を殺そうと決意したのです。

マノア渓谷に向かう

夜明けと共に、カウヒはカハラオプナが住む、マノア渓谷に向けて出発しました。

そして谷の中ほどのマヒナウリまで来た所で、歩みを止めました。
あたりはウィリウィリの林ですが、その中にハラの木が1本ありました【解説】。


彼はその木の下に腰を下ろし、少し休むことにしました。

そして、自分が受けた深い心の傷について、あれこれと考えてみました。
そうすることで、自分の心に宿る激しい怒りを、癒(いや)そうとしたのです。

しばらくすると、彼はハラの木から1房の実をもぎ取り、それを携えて再び歩き始めました。

(次回に続く)
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【解説】ウィリウィリの木 と ハラの木
・ウィリウィリ (Wiiwili)
学名Erythrina sandwicensis (原文の"Erythrina monosperma"は1932年以前の名)。

風下側の乾燥した地域に自生する、ハワイの固有種です。
比重が小さいので、カヌーのアウトリガー、魚網の浮き、サーフ・ボードなどに使われました。


・ハラ (Hala)
学名Pandanus tectorius(原文は"Pandanus odoratissimus")。

ハワイの在来種で、その葉「ラウハラ」は、マットや屋根葺き材として使われました。
雌雄異株であり、雌株はパイナップルに似た形の大きな実をつけます。



(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ.Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.