128 民話 カハラオプナ(10.嫉妬で怒り狂うカウヒ)

(前回からの続き)

愛らし過ぎたカハラオプナ

恐らくカウヒは、カハラオプナが家から出て来た所で、彼女を殺すつもりだったのでしょう(*1)。

ところが、彼女は彼を少しも疑うことなく、言われるままに出て来たのです。
しかもその姿は、余りにも愛らし過ぎました。

彼は暫(しばら)くの間、無我夢中で彼女を見つめていました。
そして我に返ると、彼女にこう言いました。

「水浴びに行きなさい。
それから、一緒に森を散歩したいので、準備しなさい。」


カハラオプナの眩(まばゆ)い光

彼女が水浴びを楽しんでいる間、カウヒは不機嫌そうに座り待っていました。

そして、彼女が放つ眩いばかりの光を、じっと見ていました。
それはちょうど虹が放つ光線のようで、泉の上空を軽やかに動き回っていました。

カウヒの心が揺れる

彼の心は大きく揺れ動いていました。

ある時は心の中で、嫉妬の炎が燃え上がりました。
そしてまたある時は、悔恨(かいこん)の思いに溢(あふ)れ、美しい彼女を恋しく思うのでした。

しかし、彼女を殺そうという、恐ろしい目的が揺らぐことは、ありませんでした。

嫉妬で怒り狂うカウヒ

婚約者が浮気したという噂(うわさ)に、カウヒはこの上なく腹を立てたようです。

なぜって? あんな価値のない奴らに、彼女が夢中になったからです。

いや、それだけじゃありません。
奴らは道徳的にも卑劣だし、 容姿だって醜い!

それと比べると、カウヒはハワイ社会の高い階級にいる特別の人です。
しかも、男としてのカッコ良さだって、かなりのものなのです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ.Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.