130 民話 カハラオプナ(12.カハラオプナの死)

(前回からの続き)

カハラオプナの懇願

カウヒの不可思議な言葉は、カハラオプナにとってあまりにも唐突でした(*1)。

びっくり仰天した彼女は顔を上げると、じっと彼を見つめました。
しかし、彼の目の中にあるのは、憎悪と殺意だけでした。

そこで彼女は言いました。

「もしも私に死ねと言うなら、なぜ私を自分の家で殺さなかったの? 
そうすれば、召使たちが私の骨を埋めることが出来たのに。

それなのに、私をこの原生林に連れて来てしまった。
一体、誰が私を葬ってくれるの?

それより前に、私がずーっと、あなたを偽り続けてきたと疑うなら、
そんな噂を信じる前に、なぜ、それが本当かどうか確かめないの?」


カウヒの一撃で死ぬ

このカハラオプナの訴えを、カウヒは聞こうともしませんでした。

彼女が必死に訴える姿を見て、彼は逆にこう確信したのでしょう。
「今さら、あれこれ考えた所で、結局は無駄になるだけだ。」

彼は彼女のこめかみを、ハラの房で殴(なぐ)りつけました。


そのずっしりと重いハラの実の房は、この渓谷に来る途中、マヒナウリで取ったものです。
彼はその房を、今まで肌身離さずに持っていたのです。

ハラの一撃をこめかみに受けたカハラオプナは、直ぐに死んでしまいました。
カウヒは急いで岩の脇に穴を掘ると、彼女の遺体を埋めました。

そして彼は、ワイキキの方角に向かって、谷を下りて行ったのです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ.Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.