132 民話 カハラオプナ(14.尾根の斜面を登る)

(前回からの続き)

カハラオプナが生き返ったことを知ったカウヒは、慌(あわ)ててもと来た道を引き返しました(*1)。

そして彼女の前に立つと、怒りを込めて言いました。
「僕の後について来るんだ!」

険しい山の斜面を登る

さて、カハラオプナが住むマノア渓谷の西隣には、ヌウアヌ渓谷があります。
この2つの渓谷は、細長く伸びる山で隔てられています。


彼ら2人は、その山の険(けわ)しい斜面を、尾根をめざして登って行きました。
か弱く育てられた乙女にとって、この山登りは大変厳しいものでした。

ある時は、イバラが絡(から)みついたやぶの中を、少しづつかき分けながら進みました。
そしてまたある時は、揺れ動く蔓(つる)にしがみついて、むき出しになった岩面を登りました。

この過酷な山登りの中で、カウヒが彼女を助けることは、一度もありませんでした。
それどころか、彼はどんどん前に進もうとしました。

彼が時々後ろを振り向くのは、彼女がついて来るのを確かめるためだけでした。

尾根にたどり着く

彼女はやっとの思いで斜面を登り切り、山の頂部、尾根にたどり着きました。

その時の彼女は、体全体が切り傷だらけで、あちこちに打撲によるあざが残っていました。
その上、彼女のパウ(スカート)は、至る所で破れてボロボロでした(*2)。

彼女は、石の上に腰を下ろして乱れた呼吸を整えてから、カウヒに尋ねました。
「私たちはどこに行くの?」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.
(*2) パウ(pa-u)とは、かつてハワイの女性が着ていた、カパで作ったスカートです(*3).
(*3) José Blanco F. et al.(2016): Clothing and Fashion; American Fashon from Head to Toe, Volume One; Pre-Colonial Times. through the American Revolution.