136 民話 カハラオプナ(18.若者に救われる)

(前回からの続き)

それはちょうど、カハラオプナの両親が守護神エレパイオから、彼女の死を知らされた頃の出来事です(*1)。

カハラオプナの霊は、彼女の体からそっと抜け出しました。
そして気がついた時には、通りすがりの人々にまぎれ込んでいました。

若者がカハラオプナを掘り起こす

やがて、霊に案内された一人の若者が、深い慈悲心から彼女を救おうと、コアの木の根元にやって来ました。
そして、彼女を覆(おお)っていた泥や木の根を取り去ると、そこにはまだ温もりのある彼女の体が横たわっていました。


彼はキヘイ(肩掛けスカーフ)を手に取り、大きく広げて彼女を包みました【解説1】。
次に、マイレ、シダ、ジンジャーで、しっかりと彼女を覆いました。

それから彼女の体を背負うと、ワイキキのカモイリイリにある、自分の家まで運んだのです(*2)。


守護神が彼女を生き返らせる

家に着いた彼は、彼女の体を兄に委(ゆだ)ねました。

兄は彼らの守護神たちに祈りを捧げ、助けを求めました。
こうして、守護神たちの厚いご加護のお陰で、彼らは遂に、彼女を生き返らせることが出来たのです。

回復するまでの彼女は、幾度となくマウオキに連れて行かれました(*3)。
そこには地下水の湧く洞窟があり、彼女はそこでカケレケレ(Kakelekele)と呼ばれる、水治療を受けたのでした。

それ以来、この水の洞窟は 「カハラオプナの水」として知られています。

(次回に続く)
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【解説1】キヘイ
キヘイ( kihei)とは、四角いタパ布で出来たスカーフで、羽織るときは片方の肩にかけて結びます。


タパ布に香り付けするには、マイレ(maile)のような、香りの良い植物が使われました。
その他にも、シダ(fern)やジンジャー(ginger)が使われることもありました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.
(*2) カモイリイリ(Kamoiliili)は、現在、モイリイリ(Moiliili) と呼ばれる地区で、ワイキキの北隣にあります。
(*3) マウオキ(Mauoki)は、ハワイ大学マウイ校南東部(セントルイス高校とチャミネード大学付近)の地名だったと推定されます。かつてその地にマウオキ・ヘイアウ(神社)があった、と伝えられるからです。