139 民話 カハラオプナ(21.カウヒの挑戦)

(前回からの続き)

命を賭(か)けたカウヒの挑戦

3日目、若者が3番目のメレを歌うと、若い2人の口論は昨日にも増して過激になりました。
そして、カウヒは若者向かって怒鳴りつけました(*1)。

「お前がカハラオプナを知ってる? そんな奴は偽者(にせもの)に決まってる。
本者は俺が知る限り、確かに死んでいるんだ!」

さらに大胆にもこう宣言して、若者に挑んだのでした。

「お前がカハラオプナだと言う女を、連れて来て見せろ!
そこで、万一その女が本者だと証明できなかったら、お前の命は無いものと思え!

その代わり、万一本者だったら、『カウヒはウソつき』 と広く世間に知らせよう。
そして、お前を侮辱した罰として、俺の命をやろう。」

若者が受けて立ち、王様を巻き込む

一方の若者も、カウヒを死に追いやるため、作戦を練っていました。

ところがその作戦の内容は、上のカウヒの宣言と同じだったのです。
そこで若者は、すぐさまカウヒの挑戦を受けて立ちました。

そして、居並ぶ王様と王族たちに、次のように願い出ました【解説1】。

「今ここで2人が約束した内容に、どうかご注目下さい。
そして、この約束が守られるようにご支援下さい。」

(次回に続く)
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【解説1】王様(King)と王族(Chief)
ハワイ諸島が一つの国に統一される前は、各島ごとに王様(King)がいました。
その王様のことを、ハワイの人々はアリイ・ヌイ(Ali'i nui)と呼びます。


王様の周囲には血縁関係にある人々、すなわち王族(Chief)がいました。
この王族のことをハワイではアリイ(Ali'i)と呼びます。

そしてこの王族は、さらに幾つかの階級に分かれていました。
このお話でも原文には "high Chief"や"highest Chief"などの語が出てきます。

ただしカウヒについては、単に"Chief"とだけ書かれています。
なお、若者については本書では記載がありませんが、キル・ハウスに出入りしているので、王族だろうと推測されます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales,Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.