141 民話 カハラオプナ(23.カハラオプナは霊ではない)

(前回からの続き)

王様が予言者の実験を許す

王様は、予言者がアぺの葉の実験をすることを、許しました(*1)。

それを一目見ようと、島のあらゆる所から多くの人々が集まって来ました。
群衆の真ん中には、最高位の王族たちが陣取っています。

その王族たちに囲まれて、王様もこの実験に立ち会いました。

カハラオプナ一行が実験を知る

カハラオプナの一行がそれを知ったのは、既に現場に向かっている時でした。
彼女の守護神たちが、そのことを知らせてくれたのです。

そして、守護神たちは彼女にこう忠告しました。
「アぺの葉を思いっきり強く踏みつけて、引きちぎってしまうのです。」

当の守護神たちは、たとえ人間の姿をしていても、本当は霊なのです。
ですから、彼女たち2人がアぺの葉に座っても、その葉は裂けません。

万一、誰かの注意が彼女らに向いたら、それはもう一大事です。
彼女らがいくら隠れても結局は見つかり、ポエ・ポイ・ウハネに殺されてしまうからです【解説1】。

彼女は人間だ、だが霊の気配がする

いよいよ予言者カエアの実験が始まりました。

カハラオプナは守護神たちの忠告に、忠実に従いました。
そうです、彼女はアぺの葉を強く踏みつけて、引きちぎったのです。

それを見た予言者カエアは、こう言いました。
「彼女は明らかに人間だ。」

「だが、霊たちの気配がするので、気を緩めず警戒を続ける。
 -- 霊たちはきっとどこかで、彼女とつながっている。」

(次回に続く)
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【解説1】ポエ・ポイ・ウハネ=霊を捕える人
ポエ・ポイ・ウハネ(poe po-i uhane)は、3つの語から成るハワイ語で、
poe = 人々、po-i = 両掌(てのひら)で捕える、uhane = 霊、を意味します。

従って 「ポエ・ポイ・ウハネ=霊を捕える人 (= spirit catchers(英語))」です。
なおポエを省略して、「ポイ・ウハネ(po'i 'uhane)」とする例も見られます(*2)。

かつてのハワイでは、ポイ・ウハネには善玉と悪玉がいる、と信じられていました。

善玉は、死にそうな人の霊を捕えて体の中に押し戻し、その人を生き返らせます。
一方、悪玉は生きている人から霊をひったくり、その人を死に追いやります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.
(*2) M.K.Pukui et al.(1979) : Look to the source, Vol. I, Queen Lili'uokalani Children's Center.